BizDev

数字で語れる結果を出す――BizDevとしての市場価値を高めるために何よりも大切なこと

キープレイヤーズ高野さんといえば、人材業界では知らない人がいないであろうトップクラスの転職エージェント。投資家としての側面も持ち、クラウドワークス、メドレー、識学などの上場企業を含む70社超への出資を行い、上場支援としては173社にも及ぶなど、人材業界にとどまらず幅広く活躍されています。

今回はそんな高野さんに、BizDevの採用ニーズやそこで求められている能力・スキルについてお伺いします。BizDevとしてのキャリアアップをお考えの方や、BizDev人材の採用をお考えの企業の方はぜひご一読ください。

採用ニーズ増加の一方、人材が圧倒的に少ないBizDev

スタートアップやベンチャー企業の採用情報で見かけることが多くなった「BizDev」という職種。転職エージェントとして長く最前線で活躍する高野さんは、昨今のBizDev採用ニーズをどのように見ているのでしょうか。

高野さん:

数年前までは「事業開発」と呼ばれることが多かったですが、BizDev採用はSaaSやAIなどの分野、特にBtoBの領域で近年急増しています。従来の事業開発の業務分掌の中での事業企画やサービス企画といった側面よりも、BtoB領域の企業ではCOOや営業責任者、CRO(Chief Revenue Officer)的な要素を求めているケースが多いように思います。BtoC領域ではPdMとして募集されていることも多いですね。

資金調達後の採用拡大に伴いBizDevの採用に動く会社も多いですが、圧倒的に人が足りないのがこのポジション。能力があるBizDevの方はすでに要職についていたり、自身で起業されていたりするので、正社員での採用は非常に難易度が高いと考えています。

正社員ではなくスポットでの契約や兼業前提で確保しに行くか、あるいは良いと思う人がいれば何年かけてでも口説きに行くぐらいの気概が必要です。インテリジェンス創業者の宇野さんも、営業活動の中でいつもコンペに負けていた競合の営業マンを何年も口説いたというエピソードもありますし、こうした地道な活動が大切だと考えています。

エンタープライズ攻略の経験がカギ

採用ニーズが急騰する一方、人材が圧倒的に不足しているBizDevのポジション。BizDevに求められる役割は非常に広く、営業や事業企画、マーケティングなど多岐にわたります。その中でもどのような経験が求められているのか、紐解いていきましょう。

高野さん:

スタートアップの資金調達環境が変わり、プロダクトもコンパウンド化が進む中で、以前のように大規模な資金調達を行って大量に営業を採用する、という流れではなくなりました。主に国内マーケット向けのプロダクトにおいては、顧客単価をいかに高めるかという戦略に各社がシフトする中で、エンタープライズ攻略がポイントであり、そうした営業組織の構築経験を持つBizDev人材は非常に希少価値が高いと思います。

私のやっている人材紹介のようなHRビジネスは、クライアント側も複数社を併用するのが常であり、エンタープライズ攻略難易度はそこまで高くありませんが、クライアントとの実質的な独占契約となるSaaSやAIなどのビジネスにおいては、エンタープライズ攻略が勝敗を決する大きなファクターとなっています。

エンタープライズを攻略するためには何よりも安心感・信頼感のある組織とサービスデリバリーの体制構築がポイント。そこの経験がある人材は非常にニーズがあると思います。

また、最終的にエンタープライズを攻略するためのパートナー戦略やアライアンスを推進できる人材も同様にニーズが高まっていますね。

数字で語れる成果を出せ

では、こうした市場価値の高いBizDev人材になるためには、どのようなスキルや経験を積むことが大切なのか。今度はビジネスパーソンの立場から、高野さんの意見を伺いました。

高野さん:

昔のように転職回数を重ねることをネガティブに捉えることもかなり減り、転職回数が多くても転職に成功している人はいますが、結果が出ない状態で転職を繰り返している方はやはり厳しい。

大切なのは、小さくても数字で語れる成果を出すこと。これに尽きます。成果を出すために、自分自身で仮説を立て、実行し、成果を出す。この一連のプロセスを自分の言葉で語れるかどうかがカギだと思います。

また、スキルセットで見れば、ひとりで営業とマーケティングの両方が実行できる方がやはり強いです。いわゆるリードを獲得するためのSNS活用やSEOなど、BizDevであれば今後必ず求められてくるスキルだと思います。

たとえばXとnoteぐらいはやっている方も多いですが、YouTubeなどの動画コンテンツとなると一気に減り、逆にやっている方はすごく希少価値が高まる。

コロナ以降、従来型の営業プロセスが変革のタイミングを迎え、購買行動が複雑化しているが故の難しさはありますが、一方でテクノロジーの進化により実行のハードルが下がっている側面もある。そうした環境で個人がインフルエンサーとなりえる時代だからこそ、そのようなインフルエンス力を持つBizDevの方には、大きなチャンスが待っていると思います。

アンラーニングし続け、未来にBETしたい

転職エージェントという軸を持ちながら、SNSにいち早く取り組み、インフルエンサーや投資家といった側面も持ち合わせる高野さん。インフルエンサーやエンジェル投資家、ソロプレナーのような言葉が一般化する前からそうした働き方を実践しチャレンジを続ける高野さんは、ある意味トップクラスのBizDevとも呼べる存在でもあるでしょう。

その高野さんご自身がどんなことを大事に取り組み、今どのようなテーマに関心があるのか、最後にお伺いしました。

高野さん:

私自身もキャリアが長くなったが故に、固定概念に捉われてしまうことを一番恐れています。常にアンラーニングし続け、新しい視点を柔軟に受け入れていきたいと考えています。

たとえば最近上場したタイミーも、サービスが出始めたときには、HR業界の関係者は割と冷めた目で見てしまっていたように思います。しかし、ふたを開けてみれば、HR業界ではビジョナルに次ぐ大型上場を果たしました。長く業界にいるからこそ見えなくなっていることもあります。こうした固定概念に捉われず、常に視点をリセットしていきたいと思っています。

最近注目しているのは、GENDAやnewmoのようなロールアップ戦略で業界構造を変えるような会社、その中でもノンデスクワーカーと呼ばれる警備や建設、介護・医療などの分野でその戦略を取っていくような会社が成長していくのではないかと考えています。その文脈で見れば、アンビスホールディングスなども注目している企業です。

投資家としてスタートアップ業界を俯瞰しながら、転職マーケットに対する知見も豊富なのが高野さんの強み。BizDevとしてキャリアアップを目指すビジネスパーソンの方は、ぜひ一度高野さんにキャリア相談してみてはいかがでしょうか。

キープレイヤーズHP:https://keyplayers.jp/

取材対象者プロフィール

高野 秀敏
株式会社キープレイヤーズ 代表取締役

東北大→インテリジェンス出身。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。70社以上の社外役員、アドバイザー、エンジェル投資を日本国内、シリコンバレー、バングラデシュで実行。7社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。173社上場支援実績あり。バングラデシュで不動産会社、商業銀行の設立からの株主、渋谷のバーのオーナーなど。

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