

人を巻き込む力、信頼を得る力、共感を生む力──ビジネスで求められる「人を動かす力」は、ツールでもフレームワークでも代替できない領域です。その原点として読み継がれるカーネギーの『人を動かす』は、今も多くのビジネスパーソンに引用されています。けれど、本当に「実践」できている人はどれだけいるでしょうか。この記事では、“知識としての理解”を超えて、なぜこの本が「態度やスタンスの教科書」として効くのか、現代の働き方にどう照らし合わせるべきかを掘り下げていきます。
プレゼン力、リーダーシップ、巻き込み力──多くの人がビジネススキルとして身につけようとする「人を動かす力」は、なぜ実務の現場で空回りしがちなのでしょうか?
よくあるのは、“やっているつもり”なのに動いてもらえないケースです。
これはスキルが足りないのではなく、「態度やスタンス」が伝わっていないからです。人は言葉以上に、「この人はどういう意図で、どこから話しているか」を本能的に読み取ります。“やり方”ではなく“あり方”が、相手を動かすかどうかを決めるのです。
カーネギーの『人を動かす』に書かれている内容は、驚くほど当たり前のことばかりです。
けれど、これを本気でやっている人は、どれだけいるでしょうか?大切なのは、「知っている」ことと「やっている」ことの間にあるギャップです。そしてこのギャップは、スキルの不足ではなく、“態度の設計”ができているかどうかによって生まれます。
たとえば、「傾聴しているつもり」でも、相手が「この人、評価しながら聞いてるな」と感じたら、信頼関係は築けません。スキルをどう使うか以上に、「どんなマインドで臨んでいるか」が伝わってしまうのです。カーネギーの原則は、そうした“人としての土台”を問い直すものです。
参考書籍:人を動かす(D・カーネギー著、山口 博 翻訳)
『人を動かす』を通して最も伝わってくるのは、人間がいかに「認められたい存在か」という点です。人を動かすとは、命令することでも、説得することでもなく、相手の自尊心に誠実に触れること。
こうした感覚が、次の行動のエネルギーになります。これは決して“おだて”ではありません。むしろ表面的な褒め言葉は逆効果です。どれだけ深く相手に関心を持てるか、どれだけ純度の高い尊重を差し出せるか──そこに信頼の可否がかかっているのです。
現代のビジネスパーソンは、「共感せよ」「傾聴せよ」「心理的安全性をつくれ」と、数多くの“対人マナー”を求められています。その結果、「ちゃんと人に向き合いたいけれど、疲れる」という“共感疲れ”が起きているのも現実です。では、どうすれば誠実に関わり続けられるのでしょうか?
まず、「全部に共感しようとしない」ことです。カーネギーが勧めているのは、感情労働ではなく、「相手に誠実に関心を持つこと」にすぎません。つまり、「相手の話を否定せず、一度受け止めてみる」だけでも十分なのです。重要なのは、「誠実な態度をとれる状態の自分でいられるか」。そのためには、自分が満たされていること、自分に“余白”があることが欠かせません。人と向き合うためには、自分との向き合い方も問われるのです。
これまでのリーダーシップ論では、「発信力」や「意思決定力」が重視されてきました。しかし今、注目されているのは、“どう振る舞うか”より“どんな姿勢で関わるか”という「態度の設計」です。
この順番を大切にできる人は、結果として自然と周囲を動かしていきます。つまり、カーネギーが説いたのは「技術」だけでなく「在り方」であり、「言葉」以上に「信頼を築くための態度」だったのです。
私たちもまた、日々の仕事の中で「人を動かす場面」に直面しています。そのとき、成果を求める前に、自分の態度は相手にどう映っているか──そんな問いを持つことこそが、カーネギー的な実践の第一歩なのかもしれません。
『人を動かす』は現代のビジネスマンにとっても学べきことの多い名著です。批判せず、認め、相手の立場を想像する──それらを本気で実践するには、自分自身の在り方と向き合うことが欠かせません。スキル偏重の時代にこそ、カーネギーが示した“信頼を築くための態度”は、ビジネスの原点として見直されるべき原則なのかもしれません。
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