

デジタル技術の進化により、事業の成長戦略は「自社完結型」から「連携・共創型」へと大きくシフトしています。その中核にあるのが「デジタルエコシステム」です。自社のプロダクトやサービスを核としながら、外部パートナーやユーザーを巻き込んで価値を拡張するこのアプローチは、成長を目指すBizDevにとって不可欠な視点となりつつあります。本記事では、デジタルエコシステムの基本概念、プラットフォーム戦略との関係、具体的な構築方法や実例までをわかりやすく解説します。
デジタルエコシステムとは、テクノロジーを基盤として、複数の企業やユーザーが互いに価値を創出・共有するビジネス環境を指します。単一企業がすべての価値を提供するのではなく、サービス提供者、開発者、パートナー、エンドユーザーといった複数のステークホルダーが関係しながら、継続的に発展していくことが特徴です。
AppleのApp Store、GoogleのAndroid、AmazonのMarketplaceなどはその代表例ですが、近年ではBtoB領域でも、API連携やデータ共有を軸としたエコシステム構築が活発化しています。事業成長は一社単独では限界があり、ネットワークを活かした価値共創が次世代の競争力になりつつあるのです。
デジタルエコシステムと混同されがちな概念に「プラットフォーム戦略」がありますが、この二つは密接に関連しつつも異なる性質を持ちます。
プラットフォーム戦略は、自社が「場」を提供することに重きを置くものです。たとえば、アプリストアやマッチングサービス、決済インフラなど、自社が仕組みを整え、他者がその上で活動できるように設計されます。
一方、エコシステムはその“場”の中で生まれる関係性そのものを指します。参加者が互いに影響を与えながら価値を共創していく動的なつながりが本質です。プラットフォームはエコシステムの“器”、エコシステムは“共創のネットワーク”と捉えると理解しやすくなります。
成功するデジタルエコシステムには、以下の3つの構成要素が不可欠です。
エコシステム全体の中心にある「核となる価値提供」。たとえば、iPhoneとiOS、またはCRMやデータ基盤など、自社の強みや独自性がここにあたります。
APIやSDK、データ連携など、他のサービスやパートナーが参加・連携しやすい技術的な基盤。開かれた設計がエコシステムの広がりを決定づけます。
参加者が継続的に関与するための動機付け。成功報酬、レベニューシェア、パートナー評価制度など、経済的・非経済的なインセンティブの設計が重要です。
この3要素がバランスよく機能することで、関係性は一過性ではなく、持続的に発展するエコシステムへと進化します。
先進企業の多くが、エコシステム型ビジネスによって拡張性と競争優位性を確保しています。
たとえば、あるECプラットフォーム企業は、アプリ開発者や物流パートナー、マーケティング支援会社を巻き込み、各プレイヤーの専門性を活かしてユーザー体験をトータルで向上させています。また、国内でもSaaS企業がAPI連携を軸に、HR・会計・業務管理などの他社サービスとつながることで、産業横断的な基盤を形成しています。
これらに共通するのは、「他社との共存を前提とした開かれた設計」です。競争ではなく共創による市場拡大こそが、エコシステム戦略の本質です。
従来のBizDevは、自社プロダクトの売上拡大や市場開拓に注力する傾向がありました。しかし今後は、「誰と組むか」「どう巻き込むか」が問われる時代に入っています。
外部連携によるスケーラビリティを実現するには、営業力だけでなく、構想力・関係構築力・技術理解が必要です。また、エコシステムの維持・成長には、ルールメイキングやガバナンス設計を含めた“仕組みづくり”の視点が欠かせません。
BizDev人材に求められるのは、自社中心の視点を超え、「ネットワーク全体で価値を最大化する」共創型の視座です。
デジタルエコシステムは、自社単独ではなく多様なプレイヤーと価値を共創するビジネスモデルです。プラットフォーム戦略を土台とし、接続性とインセンティブ設計を組み合わせることで、持続可能で拡張性のある事業を実現します。今後のBizDevには、こうしたエコシステムを構想し、設計・推進できるスキルと視点が不可欠となるでしょう。
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