日本酒ベンチャーのClear、創業50年超の老舗酒販店を買収

M&A/提携

株式会社Clearは、1965年創業の老舗酒屋「有限会社川勇商店」の発行済み株式の全てを取得し、同社を完全子会社化した。

これに伴い、同社の持つ酒類小売業免許を活用した新事業として、オリジナル日本酒を開発・販売する小売業に参入することを発表した。

酒販店買収の目的

Clearは、業界最大の日本酒専門メディア「SAKETIMES(サケタイムズ)」を運営する、日本酒事業に特化したベンチャー企業。

以前より、「SAKETIMES」で培った全国各地の酒造メーカーとのネットワーク、熱量の高い読者コミュニティ、マーケットへの深い知見を活かした小売業への参入を検討しており、川勇商店と協議を進めていた。

今回、発行済み株式の全てを取得し、同社の完全子会社化に至った。同社の持つ酒類小売業免許は、小売業における課税移出数量・品目・地域の制限がないため、今後、免許上の制限というボトルネックのない事業展開が可能となった。

新事業「SAKE100(サケハンドレッド)」について

「SAKE100」はClearが新事業として立ち上げを進めているEコマースサービス。

「100年誇れる1本を。」をテーマに掲げ、すべての商品をClearと酒蔵の共同でオリジナル開発。高品質・高価格な「プレミアム日本酒」だけををインターネットを通じて販売していくようだ。

楯の川酒造(山形県)と共同開発した第1弾商品『百光 -byakko-』は、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて先行販売を実施し、720mlで17,800円(税・送料込み)という高価格商品ながらプロジェクト開始からおよそ3時間で目標金額を達成。最終的には390万円を超える支援獲得に至った。

「SAKE100」は世界を代表するSAKEブランドを目指し、国内外で事業展開していくようだ。

国内はD2Cコマースとして、少数精鋭のオリジナルラインアップを拡充。高い付加価値を有する商品を継続的に販売していく方針だ。同時に海外への輸出交渉もスタートしており、北米・アジア・ヨーロッパを中心とした各国へと商品展開していく見込みだ。

Eコマース事業参入の背景

日本酒の課税移出数量は1973年をピークに減退している。一方、純米酒や吟醸酒といった「特定名称酒」と呼ばれる高価格カテゴリについては7年連続で伸長している。また海外輸出も8年連続で拡大。海外輸出に関しては「輸出量」以上に「輸出金額」の伸び率が大きいことから、国内同様に嗜好性の高い商品への需要が高まっていることが窺える。国内でも2010年代からは1本数万円の高価格商品も出始めており、「安価な日本酒を大量に消費するスタイル」から「高品質なお酒を少しずつ嗜むスタイル」へと、日本酒のニーズが時代と共に変わってきている。

一方で、変化していく消費者ニーズに日本酒業界が対応しきれていないのも現状だ。日本酒を評価する価値軸が画一化され、商品価格の幅が広がらず、結果として「高価格市場」が形成されていない。

Clearは、「SAKE100」によって日本酒における高価格市場の確立を目指している。日常ではなく非日常で味わう、嗜好品としての日本酒の魅力を多様な価値軸をもって打ち出していくようだ。これにより、ワインやウイスキーのように日本酒がSAKEとして世界中で認知され、親しまれていく未来を目指している。

Eコマースで日本酒を販売するには「通信販売酒類小売業免許」を取得する必要がある。こちらの免許は比較的容易に交付を受けることができるが、前会計年度の品目ごとの「課税移出数量」が3,000キロリットル以上の国内酒造メーカーが製造する酒類はこちらの酒販免許では扱えず、販売可能な国産の酒類は一定以下の規模の醸造所で製造されたものに限定される。

今回締結した株式譲渡契約により、Clearの運営するEコマースサービスにおいては、課税移出数量・品目・地域の制限なく商品を販売することが可能となる。