資金調達の場面で「ダウンラウンド」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。ダウンラウンドとは、前回の資金調達よりも低い評価額で新たな資金を調達することを指します。これは企業にとって避けたい状況ですが、成長が思わしくないときや市場環境の悪化により起こり得ます。本記事では、ダウンラウンドの概要、その影響、そして回避するための具体的な策について詳しく解説します。
ダウンラウンドとは何か?
ダウンラウンドとは、企業が資金調達を行う際に、前回のラウンドよりも低い企業評価額で新たな投資を受ける状況を指します。例えば、シリーズAラウンドで評価額が100億円だった企業が、次のシリーズBラウンドで80億円に評価額が下がった場合、これがダウンラウンドです。
ダウンラウンドが起こる背景としては、業績の成長が期待を下回ったり、経済環境の悪化や競合の台頭などが原因となります。新規投資家は、前回の評価が過大であったと判断し、より低い評価額を提示することが多いのです。
ダウンラウンドが企業に与える影響
ダウンラウンドは企業にとってさまざまな悪影響をもたらします。まず、既存の株主や従業員の株式価値が下がることで、経営陣や従業員のモチベーションが低下するリスクがあります。これにより、優秀な人材の離職や経営陣の士気に影響を与えることが考えられます。
また、ダウンラウンドは市場や投資家に対して「成長に問題がある」と見なされる可能性があります。これにより、今後の資金調達がさらに難しくなることや、企業価値がさらに下落するという悪循環に陥る危険性もあります。
さらに、投資契約に含まれる「希薄化防止条項」が発動される場合もあります。これは、既存の株主に対して追加の株式を発行することで、彼らの持ち分の価値を維持するための仕組みですが、新規投資家にとっては投資条件が厳しくなるため、資金調達の難易度が上がる要因ともなります。
ダウンラウンドを避けるための方法
ダウンラウンドを回避するためには、いくつかの戦略があります。まず、企業は自社の成長指標や財務状況を定期的に見直し、現実的な評価額を設定することが重要です。過剰な期待を抱かせるよりも、安定した成長を示す方が、次回の資金調達でもポジティブな評価を得られる可能性が高まります。
次に、資金調達のタイミングを慎重に選ぶことが大切です。経済環境や市場の状況が厳しい時期に無理に調達を行うと、評価額が下がりやすくなるため、内部留保を活用し、良好なタイミングまで資金調達を先延ばしすることも一つの手段です。
さらに、既存投資家とのリレーションシップを維持し、必要に応じて内部からの資金調達を検討することもダウンラウンドを回避する方法の一つです。既存の株主やVC(ベンチャーキャピタル)は、会社の成長を信じて追加出資を行う場合があります。このような内部資金調達を優先し、新規投資を遅らせることでダウンラウンドを防げる可能性があります。
資金調達のタイミングと評価額を管理する重要性
資金調達におけるタイミングと評価額の管理は、企業の長期的な成長にとって非常に重要です。市場の変動や経済の状況によっては、企業の評価額が大きく揺れることがあります。そのため、企業は資金調達をする際に自社の財務状況や市場環境をよく分析し、適切なタイミングでの調達を行う必要があります。
また、短期的な成長を求めすぎず、持続可能な成長戦略を描くことも大切です。評価額が高すぎると、次回以降の調達時にその成長ペースに追いつかず、ダウンラウンドに陥るリスクが増加します。そのため、現実的な評価を維持しながらも、企業の強みや成長可能性を強調して投資家にアピールすることが求められます。
ダウンラウンドを乗り越えた成功事例
ダウンラウンドを経験しながらも成功を収めた企業として有名なのが、アメリカの大手配車サービス企業「Uber」です。Uberは過去に数度のダウンラウンドを経験しましたが、その後も成長を続け、最終的には株式上場(IPO)に成功しました。
Uberの成功要因としては、ダウンラウンドの際にも経営陣が冷静に成長戦略を見直し、資金調達を乗り切った点が挙げられます。また、ダウンラウンド後もユーザー基盤の拡大や新たな収益モデルの導入に注力したことで、投資家の信頼を再構築できたことが大きなポイントです。
このように、ダウンラウンドが発生しても、それを企業の成長に必要な一時的な調整と捉え、長期的な視点で経営を続けることが重要です。
まとめ
ダウンラウンドは、資金調達において避けたい状況ですが、企業の成長に必要な試練でもあります。ダウンラウンドを回避するためには、現実的な評価額の設定や適切な資金調達のタイミング、既存投資家との良好な関係維持が重要です。仮にダウンラウンドを経験したとしても、長期的な視野を持ち、柔軟な成長戦略を描くことで、企業は再び軌道に乗ることができます。
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