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「異彩を、 放て。」をミッションに、障害のイメージ変容と新たな文化の創出を目指すクリエイティブカンパニーとして、近年注目を集める「ヘラルボニー」。
今回のBizDevキャリアでは、そのヘラルボニーでマーケティングやオンラインストアマネージャーを担当されている大屋佳世子(おおやかよこ)さんにお話を伺いました。
誰かの自己実現につながる仕事がしたい。そう語る大屋さんが歩んできたキャリアや働くうえでの価値観、そしてその想いを実現するきっかけとなった副業の経験について、お話を伺います。
「誰かの笑顔につながる仕事」が原動力
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2010年にソフトバンクへ新卒入社し、法人営業や営業企画を経験。2014年には、企業のコミュニケーション・デザインを手がけるdofへ転職。その後、リクルートにてスタディサプリENGLISHや、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」などに携わり、さまざまな経験を積んできた大屋さん。仕事を選ぶうえで、大切にしている軸とは何なのでしょうか。
大屋さん:
私の名前「佳世子」には、「世界の人のためになるような子に育ってほしい」という親の想いが込められています。この名前がとても気に入っていて、その想いをずっと大切にしてきました。幼いころから、映画『ナウシカ』のような存在にあこがれていて、誰かが取り残されている状況やいじめに疑問を持つ子どもでした。
私の仕事選びの軸は、「誰かの可能性を広げるような仕事」なんだと思います。その想いを強く意識するようになったのが、2011年の東日本大震災です。被災地には、当時から現在に至るまで50回以上足を運び、ボランティア活動にも参加してきました。元々東北には縁もゆかりもなかったのですが、「環境のせいで誰かの笑顔や可能性が閉ざされている状況に耐えられない」という想いに突き動かされていました。
昨年9月に転職したヘラルボニーは、障害のある作家を「異彩を放つ作家」と呼び、その作品をプロダクトやプロジェクトに起用することで世の中の意識変革に挑み、新しい文化を生み出そうとしている会社です。私の価値観にぴったり合う、まさに“奇跡”のような場所だと感じ、入社を決意しました。
副業がつなぐ、点と点
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そんな大屋さんがヘラルボニーと出会ったきっかけは、リクルート時代に始めた副業だったといいます。
大屋さん:
文部科学省への出向を終えてリクルートに戻り、中長期の戦略策定を行う部署に所属していました。その仕事自体は多くの学びがありましたが、顧客インサイトというよりはマクロな市場環境や競合環境に向き合う機会が多く、自分が本当に仕事を通して実現したいことから遠ざかってしまったように感じた時期がありました。そのとき、先に述べた「自分の仕事に対する想い」が、改めて明確に言語化されたように思います。
その少し前に、友人から「副業してみない?」と声をかけられていました。そこで、官民の越境転職を支援するベンチャー企業や、海外の教育を支援する企業などで、副業として広報・マーケティングの仕事に挑戦することにしました。幸いなことに、どれも当時本業ではできていなかった「誰かの自己実現や幸せへの貢献が実感できる仕事」でした。もちろん本業が最優先だったので、まずはひとつだけ試してみて、少しずつ挑戦の幅を広げていったという感じです。
そんな中、副業先のオウンドメディアで取材・ライティングの仕事をしていたとき、インタビュー相手となったのが、現HERALBONY EUROPE CEO・忍岡でした。実は数年前からヘラルボニーの存在を知っていて、プロダクトのファンでもあったので興味はありました。ただ、すでにある程度知名度が向上した今のタイミングで入社しても、あまり面白さを感じられないかもしれないと思っていたんです。
しかし、実際に話を聞いてみると、海外展開やプロダクト開発など、まだまだ挑戦できる余地がたくさんあることがわかり、「今がまさに面白いタイミングだ」と確信。転職を決意しました。
もし、副業の経験がなかったら、今ヘラルボニーで働いている自分もいなかったかもしれません。そう思うと、これまでのキャリアのすべてが、点と点でつながっていることを実感します。
経済性と社会性の両立
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こうしてヘラルボニーへ転職することになった大屋さん。まずは副業として業務委託で半年ほど参画し、その後、9月に正式入社しました。現在はマーケティングとオンラインストア部門のマネージャーとして、Webやマーケティング戦略の立案を担っています。
障害のある方々を「異彩を放つ作家」として迎え、新たな文化を生み出そうとするヘラルボニー。経済性と社会性の両立を目指すビジネスモデルに対し、大屋さんはそこで何を感じたのでしょうか。
大屋さん:
ヘラルボニーに転職する前、NPOなどで働くことも検討しました。しかし、自分にとって重要だったのは、社会的意義があるだけでなく、営利企業としてビジネス化しているかどうか。その点に魅力を感じ、ヘラルボニーを選びました。
マーケティングマネージャーとして、大切にしていることが2つあります。ひとつは、「売り込まないマーケティングやコミュニケーション」。もうひとつは、「福祉を売りにしない」ということです。
私たちが挑戦しているのは、障害のあるアーティストが描いたアートの純粋な素晴らしさ、かっこよさを、最高品質のプロダクトに載せて「本当に良いもの」として広げることです。なので、セールやクーポンなど、安売りに見えるような手段で売り込むことは極力避け、プロダクトの魅力や背景のストーリーを知っていただいてご購入いただくような体験作りを心がけています。また、作家の皆さんは、支援の対象ではなく、ヘラルボニーにとって対等なパートナーです。その意味でも、福祉を前面に打ち出すのではなく、プロダクトのデザイン性や質の高さを訴求することを大切にしています。
現在、国内で活動する契約作家は300名近くになり、海外で活躍する作家も増え続けています。それに伴い、プロダクトのバリエーションも広がっています。私自身がファンでもあるこのブランドを、より多くの人に届けていきたいと思っています。
常に「船」に乗る準備を怠らない
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「誰かの笑顔につながる仕事」をしたい。その想いが大屋さんの行動を支え、キャリアの点と点をつないできました。ソフトバンク、dof、リクルートで培った広報・マーケティングのスキル、そして副業を通じて築いた人脈やネットワーク。それらが結びついたことで、大屋さんは「自分が好きなテーマがすべてつながった奇跡のような会社」と語るヘラルボニーという“船”に乗るチャンスを手にしました。
大屋さん:
いつ、どんな形で「乗りたい船」が現れるかは、本当にわかりません。だからこそ、目の前のことに全力で取り組みながら、副業やボランティアなどを通じて興味のあることに少しずつ関わっておくことが大切です。そうすれば、いざ船が来たとき、迷わず飛び乗ることができます。
今は、副業やボランティアといった、「船」に乗らずとも参画できる方法がある時代。興味のあるテーマに、いきなり転職するのではなく、ゆるやかに関わっておくことで、自分が本当に乗るべき「船」を待つのも、ひとつの選択肢ではないでしょうか。
取材対象者プロフィール
大屋 佳世子(おおや かよこ)
株式会社ヘラルボニー Retail Department Marketing and Online Sales Team Manager
2010年、ソフトバンクに新卒入社し、法人営業や営業企画に従事。企業のコミュニケーション・デザインを手掛けるdofを経て2018年にリクルートへ。スタディサプリENGLISHのマーケティングに従事したのち、文科省に出向し「トビタテ!留学JAPAN」の広報やマーケティングを担当。帰任後は戦略部門にて中長期計画の戦略策定に携わり、2024年9月にヘラルボニーへ転職。ヘラルボニーではオンラインストアのマネージャーとして活躍中。
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