企業が果たすべき役割は「利益の追求」だけではなく、「社会との共通価値の創造」へと徐々にシフトしてきています。その中心にある概念が「シェアードバリュー（共通価値の創造）」です。本記事では、シェアードバリューの定義や背景、企業が実際にどう取り入れているのか、またBizDev（事業開発）人材としてどのように活かすべきかを解説し、今後の企業価値の再定義におけるヒントを一緒に探ってみましょう。

シェアードバリューとは何か？CSRやCSVとの違い

シェアードバリュー（Shared Value）とは、企業が事業活動を通じて「経済的価値」と「社会的価値」の両方を創出する考え方です。社会課題をビジネスの源泉として取り込むことで、企業としての持続的成長を図ろうとするものです。

従来のCSR（企業の社会的責任）は、利益の一部を社会に還元する「外付け的」な取り組みが主流でした。一方、シェアードバリューは本業に社会課題の解決を組み込む「戦略的」な姿勢をとります。また、CSV（Creating Shared Value）と同義で使われることも多く、「社会と企業が共に価値を生み出す」という発想がその核にあります。

事業の中核にこの考えを据えることで、社会的な意義と経済的利益を両立させることが可能となります。

シェアードバリューが求められる社会的背景

現代のビジネス環境において、企業はもはや「利益追求のみでは評価されない」時代に突入しています。持続可能性や倫理的な経営が重視され、消費者・投資家・求職者といったステークホルダーの価値観も大きく変化しています。

特に若年層や社会的意識の高い層では、「どんな価値を提供する企業か」「社会にどのような影響を与えているか」が購買・選択の基準になっています。また、ESG投資やサステナブル経営の潮流も企業の行動を大きく変えつつあります。

こうした中で、社会課題の解決をビジネスに取り込み、自社の価値創造と結びつけることは、企業が選ばれ続けるための前提条件となりつつあるのです。

シェアードバリューの実践イメージとそのインパクト

シェアードバリューを実践する企業は、社会課題を自社の成長機会と捉え、それに対応する製品・サービス・事業モデルを構築しています。

たとえば、持続可能な農業を支援することで安定的な原料供給を得る、あるいは教育支援を通じて将来的な顧客基盤を形成するなど、一見すると社会貢献のような活動も、長期的には競争優位の源泉となります。

このような取り組みは、単なるコストではなく投資と捉えられるようになっており、ステークホルダーとの関係性を強化し、ブランド価値や従業員エンゲージメントの向上にもつながります。つまり、社会的価値の創出が経済的リターンをもたらす構造がここにあります。

BizDev人材がシェアードバリューを活かす方法

事業開発を担うBizDev人材にとって、シェアードバリューの視点は極めて実用的かつ戦略的です。新規事業の立案において「解決すべき社会課題」を出発点とすることで、より深い共感や持続的なニーズに基づいたサービス設計が可能になります。

また、事業モデルや収益構造の設計においても、環境・地域・雇用などの要素を踏まえることで、単なる短期的収益を超えた長期視点のビジネス展開が実現します。

さらに、共通の社会的目標を持つパートナー企業とのアライアンスは、シナジーを生みやすく、BizDevが関与する協業戦略においても非常に効果的です。BizDev人材は、企業におけるシェアードバリュー創出の起点となり得る存在です。

シェアードバリューが描く企業価値の未来像

シェアードバリューの浸透によって、企業価値の定義そのものが変化しつつあります。財務的な成果だけでなく、社会的インパクトや環境・地域への配慮といった非財務的価値も、企業評価の基準として重視されるようになっています。

これは、上場企業だけでなく、スタートアップや中堅企業にとっても同様です。経営理念や企業文化に「社会との共創」が根付いていれば、社内外の共感を呼び、採用力・組織力の向上にも直結します。

企業が持つべき本質的な価値とは何か。それを見直す契機として、シェアードバリューの視点は極めて重要です。企業が社会とともに成長していくための道筋として、今後のビジネスを支える新たな価値軸となるでしょう。

まとめ

シェアードバリューは、企業が本業を通じて社会課題の解決と利益創出を両立させるための考え方です。従来のCSRとは異なり、事業の中核に社会価値を組み込むことが求められます。BizDev人材にとっては、競争優位を築く戦略視点として活用価値が高く、今後の企業価値を再定義する上で欠かせないキーワードとなるでしょう。