

毎日つい開いてしまうアプリ、気づけば何年も使い続けているサービス──それらに共通するのが「スティッキネス(粘着性)」です。なぜあるサービスは、ユーザーにとって“やめられない存在”になるのでしょうか?本記事では、スティッキネスの定義・構成要素・設計方法を体系的に整理し、プロダクトや事業に組み込むための視点を紹介します。短期のグロースだけでなく、長期的なLTV最大化にも直結する重要な概念です。
「スティッキネス」とは、ユーザーが特定のサービスに継続的に戻ってくる“粘着性”を指します。頻繁に使いたくなる、あるいは使うのが当たり前になっているような状態です。
しばしば混同されるのが「リテンション(継続率)」ですが、スティッキネスはより習慣化や心理的依存に近い概念です。たとえば、リテンションは「30日後に何%が残っているか」といった定量指標。一方でスティッキネスは、「どれだけ自然に、頻度高く、感情を持って使われているか」という定性的な側面も含みます。
MAU(月間アクティブユーザー)やDAU(日間アクティブユーザー)といったアクティブ率にも反映されますが、本質的には「プロダクトが生活・業務のどこに食い込んでいるか」という構造そのものに関わる設計領域です。
スティッキネスが高いサービスには、どんな構造的な要素があるでしょうか?
定期的にトリガーが発生する設計(通知・リマインダー・業務との接続など)によって、ユーザーの行動が日常に組み込まれます。天気アプリやタスク管理アプリは、その代表例です。
使えば使うほど、自分にとっての価値が高まる仕組み。たとえばSpotifyのプレイリスト、Notionの情報整理、Googleフォトの写真保存など。辞めたくても辞めづらくなる“資産性”が特徴です。
他者とのつながりが存在することで、離脱コストが増大します。SlackやLINEのようなサービスは、「他人が使っているからやめられない」構造そのものがスティッキネスの源泉です。
この3要素は単体でも機能しますが、組み合わせることでより強固なスティッキー構造が生まれます。
スティッキネスは偶然ではなく、意図的に設計できるものです。代表的なアプローチをご紹介します。
Nir Eyal氏の『Hooked』で提唱された4ステップ(Trigger → Action → Variable Reward → Investment)をもとに、プロダクト上で実装します。
この循環がうまく回ると、ユーザーの中に「また来たくなる回路」が形成されます。
ユーザーが蓄積したデータ(履歴・設定・成果物など)をサービス内に保持させる設計です。ただし、囲い込むのではなく「ここに蓄積する方が得」と思わせる体験づくりが重要です。
定期的な接触設計も効果的です。たとえば、月次レポートや成果通知などが“振り返りのトリガー”となり、自然な再訪を促します。
どんなサービスにもスティッキネスが必要かというと、そうとは限りません。プロダクトの特性や収益構造との整合性による相性があります。
この場合は、「都度の価値体験」を最大化する方が理にかなっています。重要なのは、利用頻度・決定プロセスに応じた設計を行うことです。
スティッキネスはUXだけの問題ではなく、組織構造とKPIの設計にも深く関わっています。
CS、マーケ、プロダクトが縦割りだと、オンボーディングと継続体験が断絶しがちです。ユーザー体験は“連続性”が命。部門をまたいだ体験設計が必要です。
DAUやWAUのような頻度系指標に加え、次のような「ユーザーが中毒的に繰り返す行動」をKPIに設定しましょう。
こうした定性的なアクティビティをトラックすることで、真に“粘着している”ユーザーを可視化し、施策の精度を高めることができます。
スティッキネスは、ユーザーがプロダクトに“戻ってきたくなる理由”を意図的に設計するための重要な概念です。単なる利用頻度や継続率では測れない、行動や心理への深い理解が求められます。習慣化・価値蓄積・ネットワーク効果を意識しながら、ビジネスモデルに即した設計を行うことで、LTVを最大化し、競争優位なサービスへと進化させることが可能になるでしょう。
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