循環取引は、複数の企業間で商品やサービスを実体なく移動させ、売上や利益を仮装する不正会計の手法の一つです。表面的には取引が活発に見えるため、外部からは気づきにくく、企業価値や経営の健全性を大きく損なうリスクがあります。BizDev・事業開発の立場でも、取引先との関係性やファイナンス観点でその兆候を察知する力が求められます。この記事では、循環取引の基本的な仕組みから実例、リスクの見抜き方、再発防止策までをわかりやすく解説します。

循環取引とは？その基本的な仕組み

循環取引とは、複数の企業が商品やサービスを互いに売買し合い、実際にはモノやサービスの移動がないにもかかわらず、帳簿上の売上や利益を仮装する不正会計の手法です。たとえば、A社がB社に商品を販売し、B社がC社に、最終的にC社がA社に同じ商品を戻すというサイクルが形成されます。これにより、各社の売上は水増しされ、外部のステークホルダーには企業の業績が良好であるように見せかけられます。実際には資金が循環しているだけで、実質的な利益は発生していないため、経営実態との乖離が生じます。

過去に発覚した循環取引の実例

循環取引は過去にも複数の有名企業で発覚し、大きな問題となってきました。たとえば、IT業界の某上場企業では、子会社を通じて関係会社間で大量の売買を繰り返し、数十億円規模の売上を不正に計上していたことが発覚しました。このケースでは、取引の大部分が実体のないものだったことが内部告発により明らかとなり、上場廃止や役員の退任にまで発展しました。循環取引が発覚すると、企業の信用は大きく失われ、ステークホルダーや取引先に多大な影響を与えます。これらの事例は、BizDevにとっても重要な教訓となります。

BizDevが注意すべき取引先の兆候

BizDev担当者は、営業や事業提携の現場で不自然な取引の兆候に早期に気づく必要があります。たとえば、「短期間での反復取引」「異常に高額な取引金額」「商品が戻ってくるような流れ」「関係会社間での売上偏重」といった要素は注意信号です。また、資金の流れに不自然さが見られたり、取引先が急激に売上を伸ばしている場合も、循環取引の疑いを持つ必要があります。こうした兆候を日常の業務から見抜くためには、財務リテラシーと現場感覚の両方が求められます。

循環取引が引き起こすリスクと影響

循環取引が企業にもたらすリスクは甚大です。まず、会計上の不正に該当するため、法的責任を問われる可能性があります。上場企業であれば、証券取引所からの処分や株価の急落、信用の失墜といった致命的なダメージを負うことになります。また、内部統制の不備が指摘され、監査法人からの信頼を失う可能性もあります。さらに、社員のモチベーション低下や優秀な人材の流出といった内部的な影響も無視できません。事業開発においても、提携先がこうしたリスクを抱えていれば、自社にも波及する危険があるため注意が必要です。

不正防止のためにBizDevができること

BizDev担当者として循環取引を未然に防ぐためには、いくつかのアクションが可能です。まず、取引先の財務内容を可能な限り精査し、透明性の高い情報開示を求めることが基本です。また、自社内の取引承認プロセスに関与し、不自然な取引が承認されないようなチェック機能を設けることも重要です。さらに、定期的に取引先との関係性を棚卸しし、リスクの高い取引を洗い出すことで、早期対応が可能となります。最後に、内部通報制度の整備や社内教育を通じて、不正の芽を早期に摘む体制づくりが求められます。

まとめ

循環取引は、一見して正常に見える取引の中に潜む重大な不正行為です。BizDev担当者は、営業活動や事業提携において、その兆候をいち早く察知し、自社のリスクを最小化する責任があります。過去の事例から学び、取引先の財務チェックや社内の承認プロセスを強化することで、不正の発生を未然に防ぐ体制を構築することが重要です。