

サブスクリプション型やSaaSビジネスにおいて、いかにして「顧客離れ」を防ぐかは収益性を左右する重要なテーマです。そこで注目されるのが「スイッチングコスト」と「カスタマーサクセス」の関係性です。単なる契約維持ではなく、継続利用したくなる体験をいかに設計するかが鍵となります。本記事では、スイッチングコストの構造と、それを高めるカスタマーサクセス戦略について解説します。
スイッチングコストとは、顧客が現在利用しているサービスから他社サービスへ乗り換える際に発生する心理的・経済的・時間的な「負担」を指します。たとえば、SaaSツールであればデータの移行、操作の習得、社内での再教育などが該当します。
このコストが高いほど、顧客は他社への乗り換えをためらう傾向があります。スイッチングコストは「悪者」として扱われることもありますが、設計次第では「信頼に基づいた継続」の後押しにもなり得ます。
スイッチングコストが高いサービスは、多少の不満があっても「移行の手間やリスク」を理由に継続されるケースが多くなります。これは特に法人向けサービスで顕著です。
たとえば、社内オペレーションに深く組み込まれているツールや、担当者との関係性が強いサービスでは、入れ替えリスクが高く、結果的に離脱が抑制されやすくなります。
ただし、この状態に甘んじると顧客満足度が低下し、いずれ「離脱覚悟」での乗り換えが検討されるリスクがあります。だからこそ、カスタマーサクセスとの連携が不可欠です。
カスタマーサクセス(CS)は、契約後のオンボーディングから継続活用、さらにはアップセルやリテンション(継続契約)までを包括的に支援する役割を担います。
スイッチングコストが高いだけでは、顧客は離脱を「先送り」するにすぎません。CSによって継続的に価値を提供し続けることで、離脱リスクを根本から低減できます。
たとえば、以下のようなアプローチが効果的です。
こうした支援によって、「納得感のある継続利用」が生まれます。
意図的にスイッチングコストを構築するためには、以下のような施策が有効です。
ただし、これらは「囲い込み」ではなく、顧客体験を高めるための仕掛けとして設計すべきです。
スイッチングコストの高さだけに依存すると、顧客体験が軽視され、契約更新時に一気に解約が進むリスクがあります。重要なのは、「離れたくない」と思える体験と、「離れにくい」構造の両立です。
そのため、スイッチングコストはあくまで“補助線”にすぎず、主軸はカスタマーサクセスによる価値提供であるべきです。価格や機能で競合に劣っていたとしても、「乗り換える理由がない」と思ってもらえる関係性の構築が、真のリテンションにつながります。
スイッチングコストは、顧客の離脱を防ぐ強力な仕掛けですが、それ単体では持続的なリテンションを生みません。顧客が「継続したい」と感じる体験を設計するためには、カスタマーサクセスとの連携が欠かせません。顧客の期待を超える支援と、サービスへの定着を促す仕組みを通じて、真のロイヤルティを育てることが重要です。
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