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出資を受ける際に知っておきたい、優先株式の参加型・非参加型とは?

スタートアップや新規事業を展開する企業が資金調達を行う際、優先株式という形で投資家から出資を受けるケースは多くあります。その中でも「参加型」と「非参加型」の優先株式は、投資家との契約において重要な要素となります。しかし、両者の違いやそれぞれのメリット・デメリットを理解しておかないと、後々大きな影響を受ける可能性があります。本記事では、優先株式の「参加型」と「非参加型」の違いを解説し、それぞれの特徴や企業側が注意すべき点を詳しく説明します。また、日本と米国における優先株式の一般的な運用方法についても触れていきます。

優先株式とは?基本的な概念を理解しよう

優先株式とは、普通株式に比べて特定の権利や優先順位が与えられる株式のことです。主に配当や残余財産の分配において優遇されるため、投資家にとって魅力的な投資手段となります。優先株式を発行することで、企業は新たな資金を調達しやすくなりますが、同時に投資家に対する権利や優遇措置を提供することになります。このため、企業はどのような条件で優先株式を発行するか慎重に判断する必要があります。

優先株式の発行には、企業の利益配分や経営権に関する重要な影響があるため、経営者はその詳細を理解した上で投資家と交渉することが求められます。特に「参加型」と「非参加型」の区別が資金調達後のキャッシュフローに影響を与えるため、事前の十分な理解が不可欠です。

参加型優先株式とは?投資家に有利な条件

参加型優先株式(Participating Preferred Stock)は、投資家にとって有利な株式です。このタイプの優先株式を保有する投資家は、企業が清算や売却される際に、まず優先的に投資額を回収します。それに加えて、普通株式の保有者と同等に、残余財産の分配にも参加する権利が与えられます。

具体的には、企業が解散や売却時に残った資産が分配される際、投資家はまず自身の投資額に相当する額を受け取ります。その後、残りの資産が普通株主に分配される際にも、その分配に加わることができます。このため、投資家は自分の投資額を確実に回収しつつ、さらに企業が成功した場合には追加のリターンも得られるため、リスクを軽減しつつ高いリターンを狙える仕組みになっています。

日本のベンチャーキャピタル(VC)業界では、参加型優先株式が一般的に採用されています。これは、特に初期段階のスタートアップへの投資において、投資家がリスクを低減させつつリターンを確保したいというニーズが強いからです。

非参加型優先株式とは?企業に有利な選択肢

非参加型優先株式(Non-Participating Preferred Stock)は、投資家にとってやや控えめな条件となる優先株式です。非参加型の場合、投資家は企業が解散や売却される際に、まず自分の投資額分を受け取りますが、それ以上の残余財産の分配には参加しません。つまり、投資家は自身の投資額以上のリターンを得ることができず、残りの資産は全て普通株式の保有者に分配されます。

この非参加型優先株式は、参加型と比べると投資家のリスクは高くなりますが、その分企業にとっては資金調達の負担が軽減される点が特徴です。企業としては、成功した際の利益を普通株式の保有者や経営陣でより多く分配できるため、事業の将来的な成長を見込んで投資家に非参加型優先株式を提供するケースもあります。

米国のベンチャーキャピタル業界では、非参加型優先株式が主流です。特に、成功したスタートアップが大きな利益を得た際に、その利益を普通株主とともに享受することを目的とする企業が多いため、非参加型が好まれます。米国では、投資家が企業の成長に賭ける姿勢が強く、成功の際には普通株式を持つ経営陣や従業員も十分なリターンを得ることができる仕組みが一般的です。

どちらを選ぶべきか?企業と投資家双方の視点

参加型優先株式と非参加型優先株式は、それぞれ投資家と企業に対するメリットとデメリットが異なるため、どちらを選ぶべきかは慎重に判断する必要があります。

企業側から見れば、参加型優先株式を選ぶと、投資家に対するリターンが大きくなり、将来の利益分配が減るリスクがあります。一方で、投資家にとって有利な条件を提供することで、資金調達をよりスムーズに進めることが可能です。一方、非参加型優先株式は企業にとって将来的な利益を保持しやすいものの、投資家の関心を引きづらくなる可能性があります。

また、企業の成長段階や市場環境も考慮するべき要素です。急成長を目指す段階では、多少の利益を手放してでも、参加型優先株式で優良な投資家を確保することが有効な場合もあります。逆に、安定した成長を目指す企業にとっては、非参加型優先株式を採用することで長期的な利益確保を優先させる選択も考えられます。

注意すべき契約条項と交渉ポイント

優先株式を発行する際、参加型・非参加型に限らず、企業が注意すべき契約条項があります。特に重要なのは、「清算権」「転換権」「優先権の倍率」などです。

清算権は、企業が売却や解散した際に、どの程度の額を投資家が優先して受け取るかを決定します。一般的には1倍、あるいは2倍といった倍率が設定されており、この倍率が高いほど投資家に有利です。転換権は、優先株式を普通株式に転換できる権利で、これも企業が成長した際にどのタイミングで転換するかが大きな影響を及ぼします。

また、優先権の倍率も慎重に設定する必要があります。倍率が高い場合、清算時に企業に残る資産が大きく減少し、普通株主や経営陣への分配が減るリスクがあるため、交渉段階でしっかりと理解しておくことが重要です。

まとめ

優先株式の参加型と非参加型の違いは、企業が資金調達を行う際に非常に重要なポイントです。参加型は投資家にとってリターンが大きい分、企業にとっては将来的な利益分配が減るリスクがあります。一方、非参加型は企業にとって利益を確保しやすいものの、投資家に対しての魅力が弱まる可能性があります。また、日本では参加型優先株式が一般的に採用されている一方、米国では非参加型が主流であり、この違いも考慮する必要があります。最適な選択は、企業の成長段階や目指すビジョンに応じて異なるため、しっかりとした理解と戦略的な交渉が必要です。

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