

事業開発や経営企画において、論理的な戦略設計を行っても、いざ実行段階で想定外の落とし穴に直面することは少なくありません。その“盲点”を事前に見抜き、戦略の精度を高めるために有効なのが「レッド・チーミング(Red Teaming)」です。
本記事では、レッド・チーミングの概念から、ビジネスへの実践的な取り入れ方、成果につながる運用方法までを、BizDev視点でわかりやすく解説します。
レッド・チーミングとは、本来は軍事やサイバーセキュリティ分野で用いられてきた「対抗的な視点からシナリオや計画を批判・検証する手法」です。
レッドチームと呼ばれる“仮想の反対勢力”が、あえて戦略や意思決定に対して疑問を投げかけることで、事前にリスクや欠陥を洗い出し、意思決定の質を高めることが目的です。
ビジネス領域においては、新規事業の立案、プロダクトローンチ、M&Aなど、失敗の許されない重要な局面で、意思決定の健全性や戦略の耐久性を検証する方法論として注目されています。
昨今のビジネス環境は、VUCA(不確実・不安定・複雑・曖昧)と言われるように、予測不能な変化が常態化しています。そうした中では、「正解をつくる力」よりも「誤りを避ける構造」を持つことのほうが、中長期的に見て組織の競争力を高めます。
しかし、多くの企業では「決定済みの戦略を否定する空気はない」「立場上、批判がしづらい」という文化的制約があります。こうした状況では、意見の多様性が失われ、結果的に戦略の視野狭窄を招きかねません。
レッド・チーミングは、意図的に異論を制度として組み込み、“敵ではなく、組織を守るための異論”をつくる仕組みとして非常に有効です。
レッド・チーミングを導入することで、以下のような戦略的なメリットが得られます。
たとえば、新サービスの投入時にレッドチームが「競合が模倣してきた場合どうなるか?」「既存顧客の混乱はないか?」といった視点で疑問を投げかけることで、より柔軟かつ実行性の高い戦略に修正される可能性が高まります。
レッド・チーミングを導入するためには、以下のようなステップを参考にしてください。
MVP、大型投資、新規事業、方針転換など、重要な意思決定が対象です。
関係部署外のメンバーや、中立的立場の人材を選出し、必要であれば外部専門家を加えると効果的です。
ホワイトチーム(立案側)は、背景・仮説・目的をオープンに提示し、レッドチームが反論しやすい環境を整えます。
レッドチームが「悪意ある競合になりきる」「リスクの最悪ケースを想定する」などの立場で徹底的に批判・検証します。
洗い出された課題を踏まえて、実行可能性と現実性を備えた形にブラッシュアップし、再設計します。
レッド・チーミングをただ導入するだけでは機能しません。以下のような組織文化やマインドセットが必要です。
実際、急成長中の企業やグローバル組織では「定期的に“あえて批判する役割”を設ける」「レビュー会議で必ず“反論担当”を立てる」といったレッド・チーミングの要素が制度化されており、戦略の質とスピードの両立に貢献しています。
レッド・チーミングは、あえて異論を組織内に制度として持ち込むことで、意思決定や戦略の質を高める実践的手法です。特にBizDev領域のようにリスクとスピードのバランスが求められる環境では、見落としやバイアスを未然に防ぐ“健全な批判文化”が成果に直結します。導入には適切な設計と心理的安全性が不可欠ですが、長期的には企業の思考力そのものを鍛える施策となり得ます。
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