BizDev

ソフトバンク社長室を経て、現在は10社超のCxOや要職を兼任――本業・副業の区別がないプロジェクト型ワークスタイル

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2018年1月、日本政府の働き方改革の流れの中で、「モデル就業規則」が改訂され、副業に関する規定が変更されることとなります。これにより、2018年は「副業元年」と呼ばれる年となり、これを皮切りに兼業・副業に関する企業やビジネスパーソンの意識は大きく変わりました。

2024年現在、兼業・副業という働き方はかなり一般化したといえるでしょう。ここから先の社会ではその流れがさらに進み、本業・副業の区別なく、プロジェクトベースで雇用契約ないしは業務委託契約を結び事業を推進するポートフォリオワーカー・パラレルワーカーがさらに増えていくと考えられます。

今回は、ソフトバンクグループでキャリアを積み、その後個人事業主として独立、現在では10社超のCxOポジションなどの要職を兼任するポートフォリオワーク・パラレルワークの実践者である三倉さんにインタビューを行いました。今の働き方を選ぶに至ったきっかけや経緯、多くのプロジェクトを同時に進めるうえで心がけているポイントなどを伺います。

10数枚もの異なる名刺を使い分ける

まず今回のインタビューに入る前に、三倉さんが従事するポジションを整理してみるところからはじめましょう。三倉さん自身が代表を務めるNAM合同会社と取締役副社長を務めるMirai Resortを筆頭に、スタートアップから上場企業、はたまたNPOに至るまで、10社超にもおよぶ企業・団体で異なる肩書を持っています。その多くが、CxOポジションなど経営幹部としての要職に就いている点も特徴的といえるでしょう。

三倉さんが独立以降携わってきたプロジェクト(一部) ※SU=スタートアップ

三倉さんがこのような働き方を選択・実践するに至ったきっかけや経緯はどのようなものがあるのでしょう。

13年のソフトバンクグループでのキャリア、そして独立

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2005年にソフトバンクに新卒入社した三倉さんのキャリアは、まず地元静岡での家電量販店で個人向けにブロードバンドの販売を行うところからスタートします。

順調に営業職としてのキャリアを積む中で、2010年に開校した孫正義の後継者育成カリキュラムである「ソフトバンクアカデミア」に内部1期生として参加、そこでの活躍を通して2011年にはソフトバンク社長室に異動し、東北震災の復興支援プロジェクトやソフトバンク社内の新規事業創出プログラムである「ソフトバンクイノベンチャー」への参画など様々な重要プロジェクトを担当します。

その後2015年、子会社であるSBヒューマンキャピタルに転籍し、地方創生支援事業を立ち上げ、牽引したのち2018年に退職し、その後独立という選択をすることになりました。

三倉さん:

SBヒューマンキャピタルの退職後、数カ月の休養を経て、今後の仕事を考えていた矢先、地元静岡で地域の中小企業を支援するプロ人材の公募を中小企業庁がやっていることを知り、そこへ応募しました。150名ほどの応募の中から選んでいただき、青果仲卸を行う企業での経営支援を行うことになりました。ここから、個人としての独立後最初の仕事がスタートしました。

ソフトバンクでのあたりまえは、通用しない

ソフトバンクグループで活躍してきた三倉さんですが、この静岡でのプロジェクトがいきなりうまくいったわけではありませんでした。

三倉さん:

組織開発という役割がメインでしたが、ソフトバンクとは業種はもちろんのこと、使う言葉も違えばスピード感も違う。会話の中でついカタカナが多くなってしまっていた自分にも気付きました。あたりまえですが、相手によって言葉選びを変えたり、話し方を変えたりするという基本的なことの大切さを再認識しましたね。一緒に汗をかくことで、プロジェクトもうまく行くようになり、5年経った現在でもこの仕事は続いています。

このプロジェクトを通して、異なる業種や規模の企業に対してどうプロ人材として参画していくかを学んだ三倉さんは、その後、人とのつながりを通して多くの企業のプロジェクトに参画、気が付けば先のように10社超もの企業へ参画することとなりました。

三倉さん:

静岡のプロジェクトを通して、異なる業種・業態、プロトコルの会社でどうパフォーマンスを発揮するか、なおかつフルコミットではない中でその価値をどう発揮し高めていくかを意識しながら仕事を進めていく中で、気が付けばこれだけの数のプロジェクトに参画するようになり、いわゆるポートフォリオワーカーという存在になっていったという感じです。

経験やスキルをより広く還元するために

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ポートフォリオワーカーとして参画する多くの企業で仕事をする中で、三倉さんが得たのはどのようなものでしょうか。

三倉さん:

20代、30代で培ってきた経験やスキルを活かして、40代をどうサバイブするか。どうすれば経験やスキルをより広範に世の中に還元できるのか。こうしたことを考え、取り組んできたことでその答えが少し見えてきたように思います。

たとえば、Aというプロジェクトである問題が生じたとします。Aの会社にとってははじめて生じる問題で社内の誰も正解を持っていません。ただ、私自身は別のBというプロジェクトでたった数カ月前に経験した問題だった、ということが想像以上に多くあります。複数のプロジェクトに参画している自分だからこそ、ここで提供できる価値がある、というシーンが非常に多いことにも気が付きました。

ポートフォリオワーカーとしての3つの心がけ

これだけ多くの名刺・肩書を持ち、本業・副業の区別なく多数のプロジェクトに参画する三倉さん。体がひとつしかない中で、どのようにバランスを取っているのかが気になるところです。

三倉さん:

このような働き方をする中で、私が心がけていることは3つあります。ひとつは、「完全に中の人としてそれぞれのプロジェクトにコミットすること」です。外部CxOとして参画する際には、「ヨソモノ感」を払拭することが極めて重要だと考えており、Slack等のアカウントに加え、名刺やメールアドレスなどを必ず発行いただくようにしています。また、契約で定められた業務範囲だけでなく、意識的に対話の機会を持つようにし、自己開示と相互理解を大切にしています。

2つめは、「外部CxOしかできないロールに徹する」という点です。社外取締役のように経営チームの牽制役・メンターとして側面支援する部分と、内部CxOのように事業を管掌し、組織を牽引する部分のハイブリット的なロールを担えるのが、私が考える外部CxOのユニークさであると考えています。そのため、時には中の人以上に現場メンバーと対話をしますし、経営陣にも忖度なく提案をしています。

最後の3つめは、「自分でないとできないこと以外は一切やらない」ということです。これだけ多くの顔を持ちながらそれぞれのプロジェクトでパフォーマンスを発揮しようとすると、自分自身のリソースがボトルネックになってしまうのが最悪なケースです。そのため、自分自身ができる限り作業というボールを持たず、中のメンバーを育成しながら任せていくことを心がけています。

生命線は、「時間管理」と「レスの速さ」

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写真:三倉さん(右)とMirai Resort社で三倉さんの秘書を務める若林さん

ここまでこの記事を読んできた方の中には、これだけ多くのプロジェクトやそこで発生するタスクをどのようにセルフマネジメントしているのか、気になる方も多いと思います。そこで、自分自身のマネジメント方法についても聞いてみました。

三倉さん:

多い時は両手でも溢れる数のプロジェクトを、延べ数百人の仲間と共に同時進行的に動かす立場にあるので、時間管理は本当に生命線です。アナログ・デジタルを問わず世の中に普及しているスケジュール管理系のツールはほぼほぼ使い倒した経験がありますが、私の場合は10周回って「Googleカレンダー最強説」にたどり着きました。

一時期は続々と私のカレンダーの隙間に会議が差し込まれ、食事やトイレの時間が無くなるのが悩みということもありましたが笑、現在では定期的にバッファとなる予定を入れてブロックすることでバランスを取っています。

また、この時間管理の観点では、受け手となる中の人がどのように感じるのかも重要なポイントになるでしょう。そこで、Mirai Resortで三倉さんの秘書を務める若林さんの声も聞いてみました。

若林さん:

三倉さんが出社するのは週に2日ほどですが、それ以外のタイミングでもSlackなどで相談すれば、いつでも即レスが返ってきます。私自身はMirai Resort社にフルコミットしているので三倉さんとは働き方が異なりますが、その違いを感じたことはまったくありません。

自分のキャリアに、2つめ・3つめの軸を持て

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最後に、三倉さんと同じように様々なプロジェクトに参画するポートフォリオワーカーを目指す方も増えている中で、そうした方がどのようなことを意識すべきか、メッセージをいただきました。

三倉さん:

ソフトバンクの社長室で働いていた際に、孫正義さんから「T字型ではなくπ(パイ:円周率)の字型の人間になれ」と言われたことがあります。T字型は縦の軸が1本だから不安定ですが、その軸が2本・3本と増えれば安定するという意味です。私はこの言葉に20代の頃に出会い、以降常にそれを意識しながら働いています。

これからポートフォリオワーカーとして挑戦していきたい方にも、ぜひこのように自分なりの武器を複数作ることを意識していただきたいと思っています。

何をやるかよりも誰とやるか、誰とやるかよりも何のためにやるか。目の前のお金を稼ぐことや自身のトラックレコードを作ることよりもこれらを大事にし、常に自分がワクワクできることに全力投球し続ける三倉さん。このインタビューを見て、三倉さんに相談したい、プロジェクトへ参画してほしいと思われた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

取材対象者プロフィール

三倉 信人
株式会社Mirai Resort 取締役副社長 / NAM合同会社 代表 / 一般社団法人うさぎとひとの幸せを支える会 専務理事

ソフトバンクグループでセールス、社長室、新規事業開発等を歴任した後、独立。現在はスタートアップ2社・NPO1社を経営しながら、個人投資家・ソロプレナーとして、上場企業からベンチャー、地方企業、官公庁等の組織づくりに幅広く携わる。グロービス経営大学院大学 MBA(経営学修士)。ソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者発掘・育成機関)1期生。

リットリンク:https://lit.link/nmikura

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