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文部科学省から民間への転職、そして「越境転職」の支援者へ。体現者が語る「リボルビングドア」のリアル

「リボルビングドア」という言葉をご存じでしょうか。直訳すると「回転ドア」という意味ですが、ここでは「官」と「民」を相互に行き来するキャリアパスや、その仕組みを指します。詳しくは、以前の記事もぜひご覧ください。

アメリカでは官民間の人事交流が盛んに行われており、日本でもその動きが徐々に広がっています。デジタル庁発足時には、スタッフ600人のうち約200人が民間企業から登用されるなど話題を呼びました。

こうした「官から民」「民から官」への越境転職を支援する稀有な転職エージェントが、VOLVE株式会社です。今回は同社で取締役を務める高橋貴哲(たかはし きてつ)さんにインタビューを行いました。高橋さんは、もともと文部科学省から民間企業へ転職し、その後キャリアアドバイザーとして「越境転職」の支援に携わっています。まさに「リボルビングドア」の体現者ともいえる高橋さんに、官から民への転職エピソードや、VOLVEでの活動を選んだ理由についてお話を伺いました。

文部科学省から民間企業を経て、スタートアップへ

まずは、高橋さんのこれまでのキャリアを振り返ってみましょう。

京都大学大学院を修了後、2010年に文部科学省に入省した高橋さんは、法令審査や生命倫理に関する指針の策定などの業務に従事されました。2014年には、M&Aに関するアドバイザリーサービスを提供するKPMG FASへ転職し、コンサルティングを3年弱経験。その後、スペインに留学してMBAを取得しました。帰国後の2019年にマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社へ転職し、そこでの経験を積みつつ、マッキンゼー卒業生でありVOLVEの代表でもある吉井さんと出会い、2023年からVOLVEの取締役に就任されています。

コンサルティングの仕事は、「官」の仕事とも近い

文科省からの最初の転職で、コンサルティング業界を選ばれたのは、どのような背景があったのでしょうか。

高橋さん:

文科省での仕事では、民間企業と接する機会がほとんどなく、正直なところ、世の中にどのような会社があるのかもあまり知りませんでした(笑)。そんな中、最初の転職でコンサルティング業界を選んだのは、大学時代の友人や先輩がそこで働いていたことも影響しています。また、コンサルティングのプロセスには、課題を設定し、調査・分析を行い、検証するという流れがあり、官公庁での政策立案と共通する要素があると感じました。

もちろん「官」と「民」では仕事の内容が全く異なると理解していましたが、こうした共通する部分は、自分が好きなことでもありました。また、「官」で身に付けたポータブルスキルは何かと考えたとき、課題設定から検証までのプロセスを組み立て、関係者と調整を図りながら推進するスキルこそが、官公庁で働く人材の強みになると思ったのです。

参考:解剖!霞が関 「調整力」はビジネスでも使える?(VOLVE)

社内メールで「お世話になります」は変?

こうした背景を経て、2014年に民間企業へと転職した高橋さん。根幹となるスキルや考え方には共通する点もあるものの、やはり「官」と「民」ではカルチャーや仕事の進め方が大きく異なり、苦労したことも多かったそうです。

高橋さん:

仕事自体は楽しかったのですが、やはりビジネスマナーや資料の作り方など、適応が必要な部分もありました。たとえば、文科省時代は省庁内のメールに「お世話になります」と付けるのが普通でしたが、民間企業では通常「お疲れ様です」といった表現が一般的ですよね。転職直後に社内メールで「お世話になります」と書いたところ、厳しく指導されました(笑)。

また、文科省ではPowerPointでの資料作成を大量には行っていなかったため、最初は資料作成にとても時間がかかってしまいました。しかし、先ほどお話ししたポータブルスキルの部分が、民間企業でも十分に役立つと改めて実感することもできました。

たとえば、コンサルティング業界のプロジェクトでは、3カ月といった限られた期間で成果を出す必要があります。その間にクライアント側のプロジェクトリーダーとミーティングできるのは10回程度。そのため、1回目でここまで決めて、2回目でこれを議論する、といったようにゴールから逆算してスケジュールを組み、実行する必要があるのです。この進め方は、実は「官」の政策立案プロセスとほぼ同じなんですよね。

自分のように「越境転職」する人を応援したい

KPMG FASとマッキンゼーという2つの民間企業での経験を経て、現在は「越境転職」を支援する人材紹介事業を手がけるVOLVEに参画された高橋さん。同じ民間企業であっても、大手コンサルティングファームからメンバー数名のスタートアップへの転職という大胆な選択をされた背景や、その動機についてもお話を伺いました。

高橋さん:

私自身、文部科学省から民間企業へ転職するときに、とても苦労しました。そもそも民間企業に関する知識が少なかったうえ、転職エージェントも「官」の事情に詳しくなかったため、これまでの経歴を説明してもあまり理解してもらえなかったのです。

こうした経験から、「越境転職」に特化したVOLVEのようなサービスへのニーズがあると感じました。また、代表の吉井をはじめ、メンバーの多くが「越境転職」を経験しており、同じ気持ちを共有できる仲間たちです。そんなメンバーと力を合わせ、このサービスをより多くの方に使っていただきたいと思っています。

もちろん、KPMGやマッキンゼーと比べると規模の違いはありますが、不思議と不安はありませんでした。それよりも、この事業を広げたいという強い想いと、小さな組織で挑戦したいという気持ちが勝っていたのです。

「リボルビングドア」を広げていく

2023年にVOLVEに参画して以来、高橋さんは「官から民」へのキャリアアドバイザーとしての活動を軸に、「民から官」への転職で求められる小論文や面接対策のサポート、オンラインイベントの開催など、「リボルビングドア」を広げるために精力的に取り組んでいます。

実際に、どのような民間企業がこうした人材を必要としているのか、高橋さんにお話を伺いました。

高橋さん:

私が文科省から転職した時点では官公庁からの民間転職先はコンサルティングファームが多かったのではないかと思います。しかし、最近では事業会社やスタートアップなど、より幅広い企業が官公庁出身の人材を求めるようになっており、VOLVEの紹介先も多様になっています。

事業会社やスタートアップで採用されるポジションとしては、社長室や経営企画、事業開発、政府渉外のほか、自治体向けの営業を担当する部門などが見られます。これらのポジションでは、行政へのアプローチや折衝が求められる場面はもちろんですが、社内の部署間の合意形成を諮りつつ事業計画の企画・立案をしていくといった場面でも、官公庁出身者の多様なステークホルダーを含めた合意形成に関する経験やスキルが期待されています。

また、ベーススキルの高さに加え、幅広い業務に対応できる柔軟性や、状況の変化に対して素早くキャッチアップし、取り組む姿勢が評価されるケースもあります。

求職者の方とお話している中でも、官公庁の方々への転職支援を専門に扱っているということで「民間企業へ転職するならまずはVOLVEに相談してみよう」と第一想起で考えていただける方が増えてきている実感があります。

官公庁からの転職希望者には、もともと世の中に良いインパクトを与える仕事がしたいという動機で入省した方が多い傾向があります。そのため、事業会社やスタートアップで、何らかの社会課題の解決に貢献できる事業やサービスに携わりたいという想いを持つ人も少なくありません。

とはいえ、官と民という異なる分野に挑戦する中で、採用する民間企業と転職を目指す官公庁出身者の双方で、想像と異なる課題が生じることもあります。だからこそ、「越境転職」を自ら体験してきたキャリアコンサルタントがいる当社の存在価値が、企業にも求職者にも高く評価されているのだと思います。

現状では「官から民」への転職支援及び「民から官」への転職支援の二本柱で事業を推進しておりますが、今後は霞が関にとどまらず地方自治体と民間企業との行き来をサポートするなど、事業の幅をさらに広げていきたいと考えています。

高橋さんが語るように、「官から民」への転職支援において唯一無二のポジションを確立しているVOLVE。官公庁人材の採用をお考えの企業は、ぜひ一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

取材対象者プロフィール

高橋 貴哲(たかはし きてつ)
VOLVE株式会社 取締役

京都大学農学部応用生命科学科卒業、同大学大学院生命科学研究科修了。2010年文部科学省入省後、法令審査、資源エネルギー庁出向、ライフサイエンス研究における生命倫理関係指針策定等を経験。2014年よりKPMG FASに入社し、市場調査分析等のコンサルティングに従事。スペインIESEビジネススクールでのMBA取得を経て、2019年にマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社入社。製薬・医療機器や自動車関連企業等のクライアントへのコンサルティングに従事。2023年4月VOLVEへ参画、取締役に就任。

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