
仕事は辞めていないのに、必要最低限の業務だけを淡々とこなす──そんな「静かな退職(Quiet Quitting)」という働き方が注目されています。これはサボりではなく、働く側の意識や価値観の変化を象徴する行動です。背景には、過度な成果主義や働きすぎに対する反発、そして人生における仕事の意味の再定義があります。本記事では、静かな退職が生まれた背景と、個人・組織それぞれが考えるべきポイントについて整理します。
静かな退職(Quiet Quitting)とは何か
静かな退職(Quiet Quitting)とは、会社を辞めることなく、与えられた仕事の範囲内でのみ業務を行い、それ以上の努力や貢献を避ける働き方です。アメリカの若年層を中心に広まったこの概念は、SNSやメディアを通じて世界中に拡がり、日本国内でも注目されるようになりました。
あくまで職務内容を全うしているため、上司からは一見“問題のない社員”に見えることが多い一方で、実際には意欲やエンゲージメントが大きく低下しているケースもあります。静かな退職は単なる怠慢ではなく、「仕事と人生のバランスを見直す」というメッセージを内包しているのです。
なぜ今、「静かな退職」が広がっているのか
コロナ禍によって働き方が大きく変化したことが、静かな退職の広がりに拍車をかけました。リモートワークによって仕事の境界が曖昧になり、「働きすぎ」「燃え尽き」が可視化されたことが大きな転機です。
また、企業側の過剰な成果主義や業務負荷に対し、正当な報酬や評価が得られていないと感じる人が増えています。加えて、Z世代やミレニアル世代を中心に、「仕事が人生の全てではない」という価値観が定着してきたことも背景の一つです。
やりがいよりも自分の時間を重視し、“頑張りすぎない”選択が静かに浸透しているのです。
組織にとってのリスクと見逃せないサイン
静かな退職は、業務上は目立ったトラブルを起こさないため、管理職が気づきにくいという厄介な側面があります。しかし、意欲や自発性が欠けたままの状態が長期化すれば、チーム全体のパフォーマンスや雰囲気に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、リーダー層が静かな退職状態にあると、部下のモチベーションまで下がるという“伝播”も起きかねません。見逃してはいけないサインとしては、「指示されたことしかしなくなる」「提案や相談が減る」「雑談や参加姿勢が消える」など、日常のちょっとした変化がヒントになります。
個人が「静かに退職」する理由と心理
働き手が静かに退職する背景には、心理的・感情的な“断絶”が存在します。「頑張っても評価されない」「いつも余計な仕事を押し付けられる」「オーバーワークに耐えられない」──こうした不満が積み重なると、最終的に「これ以上は期待されないようにしよう」という防衛的な行動に繋がります。
また、仕事そのものにやりがいを感じられなくなったり、個人の人生観の変化によって働き方を見直す人もいます。これは単なる不満というよりも、企業と個人の関係性が問い直されている状態とも言えるでしょう。
「静かな退職」を防ぐために、組織と個人ができること
組織ができる第一歩は、「無理をさせない」ことではなく、「声をかけ続ける」ことです。形式的な評価や表面的な称賛ではなく、日常のコミュニケーションや1on1で信頼関係を築くことが、早期のエンゲージメント低下の兆候を察知する鍵になります。
また、業務負荷と役割のバランスを定期的に見直すことも重要です。一方、個人側も「黙って距離を置く」のではなく、「線を引きたい理由」を対話する姿勢が求められます。
すべての働き方が“前のめり”である必要はありませんが、静かに退職する前に「納得して働く状態」を築ける余地はきっとあるはずです。
まとめ
静かな退職は、今の仕事や働き方に対する違和感や疲労の表れであり、サボりではありません。背景には、価値観の多様化や報酬と評価のミスマッチ、過剰な働き方への反発があります。組織と個人の双方が、働き方の線引きや関係性の在り方を問い直すタイミングに来ています。静かに辞める前に、静かに話し合える関係性づくりが大切です。
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