
SmartHRといえば、もはや本メディアの読者で知らない人はいない、日本を代表するユニコーン企業。「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というコーポレートミッションを掲げ、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供するSaaS企業として知られています。
登録社数は60,000社を超え、サービスの領域も労務管理からタレントマネジメントへと拡張を続けています。従業員数も1,400名を超える規模へと成長し、国内SaaS業界をけん引する存在となっています。
そんなSmartHRでBizDev機能を担っているのが、今回インタビューを行った古川さんです。HR領域の急成長企業であるネオキャリアにて執行役員を務めたのち、次のキャリアとしてSmartHRを選び、現在はBizDev部門の責任者として活躍されています。
今回のインタビューでは、古川さんのこれまでのキャリアを紐解くとともに、“BizDev的”な思考法の原点についてお話を伺いました。
ネオキャリアの急成長をけん引

高校卒業後、バンド活動と並行してアルバイトをしていた飲食店に、正社員として入社した古川さん。2006年には、人材系ベンチャーであるネオキャリアに転職します。
古川さん:
私が入社した当時のネオキャリアは、設立からわずか6年で、従業員数も100名前後というステージでした。経営層も全員が20代という非常に若い環境で、その勢いと可能性に惹かれて入社を決めました。
中途求人広告の営業からキャリアをスタートし、マネージャー、事業部長へとステップアップしていきました。リーマンショックの際には売上が10分の1ほどに激減するという、なかなかハードな経験もしましたね。
その後は新卒採用事業に異動し、事業企画室長、事業部長、そして執行役員と、役割を広げていきました。現在ではネオキャリアは従業員数3,000人を超える大組織になっていますが、その急成長の過程を現場で経験できたことは、私自身にとって非常に大きな学びになりました。
ネオキャリアを退職する前に手がけていたのが、「MOCHICA(モチカ)」というLINE上で求職者とコミュニケーションがとれる採用管理ツールです。このプロジェクトを通じて、SaaSというビジネスモデルと出会ったことが、SmartHRへの転職を考えるきっかけになりました。
それまで担当してきたのは、求人広告や採用コンサルティング、BPO事業といった、どちらかというと「人が動く」ビジネス。一方、SaaSは仕組みで価値を提供するという、まったく異なる考え方です。その概念を理解し、吸収するために、さまざまなSaaS関連の勉強会やセミナーに積極的に参加するようになりました。
そのなかで出会ったのが、SmartHRという会社です。当時、こうしたセミナーに必ずと言っていいほど登場していたのが、SalesforceとSmartHRの2社。SmartHRってなんだ?と興味を持ち調べてみると、まだ創業間もない若い会社であることがわかり、ますます惹かれていきました。
「ラクしたい」から工夫が生まれる

営業という職種を軸にステップアップしてきた古川さんですが、お話を伺っていると、その印象は「トップセールス」というよりも、BizDevや事業企画に近い印象を受けます。
古川さん:
ネオキャリアに入社した当時は、まだCRMやSFAといった概念すら存在していない時代でした。営業メンバーは、それぞれが自分でテレアポ用のリストを作成していたんです。私も、求人媒体各社の更新日をあらかじめ把握し、更新タイミングに合わせて誰よりも早く出社してリストを作るなど、何かをハックするような動きに面白さを感じていました。
自分で予算やKPI管理のシートを独自に作成したり、業務の効率化を目的にSalesforceやChatworkなどのツールを導入したりと、新しいツールやサービスを積極的に取り入れてきました。もっと便利にしたい、もっとラクにしたいという想いが常に強くあったんです。
古川さんのこうしたハック思考は、どのような体験によって培われたのでしょうか。その原点について伺いました。
古川さん:
バンド活動をしていた頃の経験が、きっかけかもしれません。当時、デモテープを作るためにはMTRという機材が必要だったのですが、これがとにかく使いづらくて。UIも不親切で、素人が扱うには難易度が高かったんです。そこで、自分で使い方を調べたり、アルバイトで貯めたお金でMacを買って音楽編集ソフトを使ったり、WindowsのデスクトップPCを自作してみたり、とにかく新しいものに早く飛びついて試してみるタイプだったと思います。
飲食店でアルバイトをしていたときも、コースメニューの受発注管理が手書きで行われていて、とても非効率でした。そこで、アルバイトの立場ながら、予約台帳の情報から必要な発注数を自動計算できるExcelシートを自作して、業務を便利にしたこともあります。こうした「仕組みで課題を解決する」ということに、昔から関心があったのだと思います。
SmartHRで再び100→1,000のステージを経験

前述したSmartHRとの出会いを経て、2020年1月に転職した古川さん。入社後の仕事内容について伺ってみましょう。
古川さん:
最初は、インサイドセールス組織のマネージャー候補として入社しました。当時のチームは12〜13人ほどの規模でしたが、専任のマネージャーは不在で、マーケティングチームのVPがインサイドセールスのマネージャーも兼務している状況でした。いわゆる「大人が必要」なタイミングだったのだと思います。
私は、チーム編成の見直しやリーダーの育成、採用など、組織づくりを中心に担っていました。
KPIについては、当初は「商談獲得数」のみが指標でしたが、実際の運用に即して「商談実施数」や「有効商談数」など、より精緻な指標へと変更していきました。
2022年8月からはエンタープライズセールス部門に異動し、本部長を務めることになりました。ちょうどその頃、SmartHRでは「人事労務」領域から「タレントマネジメント」領域へとサービスを拡張し、それをエンタープライズ市場にどう展開するかがテーマとなっていました。
人事労務は比較的ニーズが明確で、導入までの“答え”が見えやすい領域です。一方、タレントマネジメントは企業によって課題や活用方法が異なり、明確な正解が存在しません。すでに市場をリードしていた競合他社との差別化をどう図るか、という点が大きなチャレンジでした。
加えて、ちょうどその時期には人的資本開示の義務化も話題となり、大手企業の間では「何か始めなければならない」という空気が生まれていました。タレントマネジメント導入への追い風が吹くなか、SmartHRとしても全国・全業種に向けて積極的に展開していく必要がありました。
とはいえ、当時のチームは20代後半から30代半ばのメンバーが中心で、私が着任する以前は、目標未達が続いていた状態でした。目標の高さに対して現実とのギャップが大きく、いわゆる「ファイティングポーズ」が取れていない状況だったのです。
まず着手したのは、強い当事者意識を持って動けるメンバーをリーダーに任命することです。また、当時は「タレントマネジメントは大手には売れない」という空気が現場に広がっており、経営の方針と現場の温度感にもズレがありました。
そこで、経営と現場のすり合わせを丁寧に行い、「人事労務+タレントマネジメント」のセット販売ではなく、それぞれを切り分けて提案するスタイルへと転換。提案の柔軟性が高まったことで、チームとしても成果を出せるようになりました。
2020年1月の転職から、2023年末まで上記のような取り組みを経て、着実に評価を積み重ねてきた古川さん。現在は従業員500名未満の企業を対象とするグロースマーケット事業本部に所属し、その中でBizDev機能を担うプランニング本部の本部長を務めています。
古川さん:
これまでSmartHRの営業組織は「ザ・モデル型(IS→FS→CSの分業制)」でした。このスタイルは当時の当社の組織サイズにおいては効果的でしたが、顧客数の増加と組織の拡大、そしてサービスの拡張に伴いフィットしない部分も出てきたんです。
その背景もあり、現在は組織を「エンタープライズ事業本部(501名以上)」と「グロースマーケット事業本部(500名以下)」に分け、それぞれの中にインサイドセールスなどの機能を内包する形に変更しました。
私が率いているのは、グロースマーケット事業本部の中にあるプランニング本部です。この本部は、「プランニング部」と「イネーブルメント部」の2つの部門で構成されています。
プランニング部では、事業戦略の立案をはじめ、KPIのモニタリングや分析、そこから導き出される施策の企画・推進を担っている「ストラテジーユニット」をはじめ、現場の生産性をあげるために事務手続きなどを効率化する「Bizデスクユニット」や、顧客向け資料の管理・更新を行う「コンテンツユニット」もこの部門に含まれます。
一方、イネーブルメント部では、インサイドセールスからカスタマーサクセスまで、顧客と相対する部門のメンバーのオンボーディングや研修の設計・実施を担当しています。さらに、新商品の社内への浸透支援や、ナレッジの整理・共有といったナレッジマネジメントの役割も担っています。
組織の成長ステージに応じて、必要な機能を自前で整備し、営業活動全体を支える基盤をつくること。それが、私たちプランニング本部の大きなミッションです。
「なんとかしてくれ」に応え続ける

SmartHRのBizDevにおいて求められるのは、部門横断で物事を前に進めていく力だと古川さんは語ります。社員数も1,400人を超える規模となった現在、ひとりで完結する仕事はほとんどありません。丁寧にコミュニケーションを重ねながら、あらゆる部門を巻き込んで推進していくことが欠かせないのです。
古川さん:
今、私たちに必要なのは、部門間の橋渡しや、方向性のすり合わせを担う“つなぎ役”の存在だと思います。BizDevには、調整だけでなく、物事を推進する強い意志と、巻き込む力が求められます。
そんな古川さんが、今後のキャリアで見据えているのは、「次なるSmartHR」のような事業を生み出していくようなチャレンジに携わることです。
古川さん:
SmartHRに入って6年が経ちました。自分では特別な専門性があるとは思っていないんですが、その分、“なんとか形にする力”はあると思っています。実際、私に届くオーダーって、だいたい「なんとかしてくれ」なんですよね。ジャンルもバラバラですが、ネオキャリア時代の経験も含めて、100→1,000のフェーズで起きるあらゆる問題には、それなりに対処してきた自負があります。
だからこそ、次に挑戦したいのは、10→100のフェーズです。いずれは、SmartHRに匹敵するような、新しい価値を社会に届けられる事業づくりにも関わっていきたいと思っています。もちろん、SmartHR自体の成長にも、これからも引き続き貢献していくつもりです。でも、「次なるSmartHR」をつくるようなチャレンジにも、ぜひ取り組んでみたいと思っています。
SmartHRでは、古川さんのようなBizDev職をはじめ、多岐にわたるポジションで中途採用を行っています。ご興味ある方はぜひご覧ください。
株式会社SmartHR 採用サイト
取材対象者プロフィール
古川 智之(ふるかわ ともゆき)
株式会社SmartHR グロースマーケット事業本部 プランニング本部 本部長
2006年、株式会社ネオキャリアに入社。求人広告(中途・新卒)の営業をはじめ、事業部長や新規事業の立ち上げなど、さまざまなポジションを経験し、2016年に執行役員へ就任。
2020年1月、株式会社SmartHRに転職。インサイドセールス組織のマネージャーや、エンタープライズセールス部門の本部長を歴任し、現在は従業員数500名以下の企業を対象とするグロースマーケット事業本部において、BizDev機能を担うプランニング本部の本部長を務めている。
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