

なぜ、あるプロダクトは選ばれ、別のものは選ばれないのか。見た目も機能も似ているのに、明暗が分かれることがあります。それは、スペックや価格では説明できない「選ばれる理由」があるからです。
ジョブ理論(Jobs to Be Done)は、顧客が何のためにそのプロダクトを“雇っているのか”という視点で理由を探るフレームワーク です。本記事では、ジョブ理論の基本から、プロダクト戦略にどう活かすかまでをわかりやすく整理します。
ジョブ理論とは、顧客はプロダクトを「買う」のではなく、「自分の課題を解決するために雇っている」と捉える考え方です。この「ジョブ(Job)」とは、顧客が“達成したいこと”を意味します。
たとえば、朝コンビニでバナナを買う人がいるとします。単に「お腹を満たす」だけでなく、「健康的に済ませたい」「時間がないから手軽に済ませたい」「太りたくない」といった背景があるかもしれません。
このように、同じ商品でも、買う理由(=ジョブ)は人によって異なります。ジョブ理論は、「なぜそれを選んだのか?」という選択の裏側にある目的や文脈を構造化して考えるフレームワークです。
多くの企業は、ターゲット属性(年代・性別・職業など)に基づいて商品を設計します。ですが、それだけでは「本当に売れる理由」が見えてきません。
ジョブ理論には、以下のような強みがあります。
たとえば「若者向けのSNS」と言っても、「暇つぶし」「承認欲求」「他人の生活をのぞきたい」など、使われる理由(ジョブ)はさまざまです。
この違いを理解せずに機能だけを追加しても、本質的な改善にはつながりません。ジョブを見つけることで、「本当に必要とされている価値」に集中した戦略を立てることが可能になります。
ジョブを見つけるには、顧客の声をそのまま聞くだけでは足りません。「なぜそう思ったのか」「なぜその選択をしたのか」という背景にあるストーリーを掘り下げることが大切です。
こうした問いを通じて、「機能的な目的」だけでなく、「感情的な期待」や「社会的な役割」も見えてきます。
例:
Web会議ツールを使うジョブは「会議を開く」ではなく、
「相手にしっかり伝わったという実感が欲しい」
「スマートな印象を与えたい」といった要素が含まれているかもしれません。
ジョブ理論を活かすには、プロダクトの設計や改善にジョブの視点を組み込むことが重要です。
たとえば、あるスケジュールアプリが「予定を入れる」だけでなく、「誰かに頼まれても断る理由になる」としたら、それが“雇われているジョブ”になります。
数値では見えにくい“進捗の実感”を観察することが、ジョブ視点ではとても重要です。
ジョブが明確になると、マーケティングやポジショニング設計に一貫性が生まれます。
例:
「オンライン学習サービス」を提供する場合、
「スキルを高めたい人向け」よりも、
「自己肯定感を取り戻したいときに“自分は学べている”と実感できる場」と伝えた方が、刺さる可能性があります。
ジョブ理論を使えば、“プロダクトを売る”から、“文脈の中で選ばれる”へのシフトが可能になります。
ジョブ理論は非常に強力なフレームワークですが、以下のような誤解や過信には注意が必要です。
実際には、市場構造・ブランド・価格など、複合的な要因が選ばれる理由に影響します。また、インタビューの質や分析力が足りなければ、ジョブの深掘りも表面的になってしまいます。
ジョブ理論は、あくまで「顧客の選択理由に光を当てる1つの強力な補助線」であるというスタンスが健全です。
ジョブ理論は、顧客が“なぜそれを選ぶのか”という理由を、「雇用」という考え方で整理するフレームワークです。
表面的なニーズではなく、背景にある感情や状況まで深掘ることで、プロダクト戦略の設計・改善・伝え方をすべて顧客起点で見直すことができます。
機能や価格では差別化が難しい時代にこそ、“売れる理由”を構造化するこの視点が重要です。
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