マーケティング

なぜあのサービスはやめられないのか?スティッキネスの本質と設計論

毎日つい開いてしまうアプリ、気づけば何年も使い続けているサービス──それらに共通するのが「スティッキネス(粘着性)」です。なぜあるサービスは、ユーザーにとって“やめられない存在”になるのでしょうか?本記事では、スティッキネスの定義・構成要素・設計方法を体系的に整理し、プロダクトや事業に組み込むための視点を紹介します。短期のグロースだけでなく、長期的なLTV最大化にも直結する重要な概念です。

スティッキネスとは何か?リテンションとの違い

「スティッキネス」とは、ユーザーが特定のサービスに継続的に戻ってくる“粘着性”を指します。頻繁に使いたくなる、あるいは使うのが当たり前になっているような状態です。

しばしば混同されるのが「リテンション(継続率)」ですが、スティッキネスはより習慣化や心理的依存に近い概念です。たとえば、リテンションは「30日後に何%が残っているか」といった定量指標。一方でスティッキネスは、「どれだけ自然に、頻度高く、感情を持って使われているか」という定性的な側面も含みます。

MAU(月間アクティブユーザー)やDAU(日間アクティブユーザー)といったアクティブ率にも反映されますが、本質的には「プロダクトが生活・業務のどこに食い込んでいるか」という構造そのものに関わる設計領域です。

サービスが“やめられなくなる”理由とは?3つの核心要素

スティッキネスが高いサービスには、どんな構造的な要素があるでしょうか?

1. 習慣化(Habit-forming)

定期的にトリガーが発生する設計(通知・リマインダー・業務との接続など)によって、ユーザーの行動が日常に組み込まれます。天気アプリやタスク管理アプリは、その代表例です。

2. 価値の蓄積(Value Accumulation)

使えば使うほど、自分にとっての価値が高まる仕組み。たとえばSpotifyのプレイリスト、Notionの情報整理、Googleフォトの写真保存など。辞めたくても辞めづらくなる“資産性”が特徴です。

3. コミュニティ・ネットワーク効果(Social/Network Effect)

他者とのつながりが存在することで、離脱コストが増大します。SlackやLINEのようなサービスは、「他人が使っているからやめられない」構造そのものがスティッキネスの源泉です。

この3要素は単体でも機能しますが、組み合わせることでより強固なスティッキー構造が生まれます。

スティッキネスを高めるプロダクト設計の具体的アプローチ

スティッキネスは偶然ではなく、意図的に設計できるものです。代表的なアプローチをご紹介します。

Hookモデルの活用

Nir Eyal氏の『Hooked』で提唱された4ステップ(Trigger → Action → Variable Reward → Investment)をもとに、プロダクト上で実装します。

  • Trigger:通知やリマインダーで利用を促す
  • Action:ワンタップなど簡易なUXで即行動
  • Variable Reward:予測できない報酬(いいね、ポイント、更新)
  • Investment:プロフィール登録やカスタマイズ、データ蓄積

この循環がうまく回ると、ユーザーの中に「また来たくなる回路」が形成されます。

データの“ロックイン設計”

ユーザーが蓄積したデータ(履歴・設定・成果物など)をサービス内に保持させる設計です。ただし、囲い込むのではなく「ここに蓄積する方が得」と思わせる体験づくりが重要です。

リテンションを刺激するタッチポイント設計

定期的な接触設計も効果的です。たとえば、月次レポートや成果通知などが“振り返りのトリガー”となり、自然な再訪を促します。

スティッキネスとビジネスモデルの相性を見極める

どんなサービスにもスティッキネスが必要かというと、そうとは限りません。プロダクトの特性や収益構造との整合性による相性があります。

スティッキネスが求められるプロダクト

  • SaaS(B2B/B2C問わず):チャーン低下がLTVに直結
  • サブスクリプション型サービス:継続利用が前提
  • コミュニティ型:ネットワーク効果を維持するためアクティブ率が重要

あえてスティッキネスを追わないケース

  • スポット購入型EC
  • 高単価・一発勝負のプロダクト(例:引越し、ブライダルなど)

この場合は、「都度の価値体験」を最大化する方が理にかなっています。重要なのは、利用頻度・決定プロセスに応じた設計を行うことです。

スティッキーなサービスを支える組織とKPI設計

スティッキネスはUXだけの問題ではなく、組織構造とKPIの設計にも深く関わっています。

部署横断で体験をつなぐ

CS、マーケ、プロダクトが縦割りだと、オンボーディングと継続体験が断絶しがちです。ユーザー体験は“連続性”が命。部門をまたいだ体験設計が必要です。

KPIは「回数」ではなく「習慣化指標」

DAUやWAUのような頻度系指標に加え、次のような「ユーザーが中毒的に繰り返す行動」をKPIに設定しましょう。

  • 週3回以上の投稿
  • 月4回以上のレポートDL
  • 毎週のログイン継続 など

こうした定性的なアクティビティをトラックすることで、真に“粘着している”ユーザーを可視化し、施策の精度を高めることができます。

まとめ

スティッキネスは、ユーザーがプロダクトに“戻ってきたくなる理由”を意図的に設計するための重要な概念です。単なる利用頻度や継続率では測れない、行動や心理への深い理解が求められます。習慣化・価値蓄積・ネットワーク効果を意識しながら、ビジネスモデルに即した設計を行うことで、LTVを最大化し、競争優位なサービスへと進化させることが可能になるでしょう。

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