
ひとつの企業の中で、「スモールビジネス型」と「スタートアップ型」の事業が同居することは珍しくありません。しかしこの2つは“営業の設計思想”が根本的に違う、いわば別競技です。その違いを理解せずに同じ営業手法を当てはめてしまうと、事業がうまく進まないどころか、チームや顧客との信頼関係も崩れかねません。BizDevとして理解しておきたい営業戦略の違いを、実例とともに構造的に整理します。
別競技であることを認識する
「スモールビジネス型」と「スタートアップ型」では、以下のような違いがあります。ここをまず理解することが前提として大切です。
項目 | スモールビジネス型 | スタートアップ型 |
---|---|---|
主体 | 人/信頼関係 | 仕組み/プロダクト |
スケーラビリティ | 限界あり | 再現性・成長前提 |
資金戦略 | 小規模・自走型 | 調達前提・先行投資型 |
成功パターン | 継続取引・紹介 | 非連続成長・市場獲得 |
例 | 講師業、コンサル、受託制作 | SaaS、マッチング、AIプロダクト |
営業戦略の根本的な違い

スモールビジネス型:関係構築重視の営業
- 営業の主戦場:紹介、信頼ベースの直接営業、SNSや勉強会などの交流
- 訴求軸:実績、人柄、信頼感
- 顧客が重視するのは「誰がやるか」「どれだけ丁寧か」
スタートアップ型:仕組み化されたスケーラブルな営業
- 営業の主戦場:広告、インサイドセールス、チャネル戦略
- 訴求軸:効果、効率、スケール、再現性
- 顧客が重視するのは「どれだけ楽になるか」「どう変化するか」
「スモールビジネス型」→「スタートアップ型」への進化は可能
最初は属人的な営業で収益を確保し、ノウハウがたまってきたら“型化”。そこからチーム化、仕組み化、プロダクト化へと進化するのが王道の一つです。
スモールで立ち上げ、仕組みに昇華する。この段階的進化は王道の一つ。
「スタートアップ型」→「スモールビジネス型」文脈に戻るときの罠
資金調達環境の悪化などで、SaaS企業が受託やコンサル、AI研修などを始める場面も増えています。その際に重要なのは、“営業の構え”も変えること。
- 属人的対応が必要な商材に、THE MODEL型の仕組み営業は通用しない
- 顧客の意思決定は「人」や「ストーリー」に依存する
仕組み営業では伝わらない信頼や熱量を、どう届けるかがカギ
THE MODEL型営業の誤用パターン
よくある失敗:
スモールビジネス的な事業に対して、THE MODEL型(分業・定量管理型)の営業体制を導入してしまう。
- 顧客単価が低く、営業工数が合わない
- 信頼を構築すべきタイミングで、誰の顔も見えない
- 定型スクリプトが通じない商材に、型通りの営業を押し込む
項目 | THE MODEL型 | スモールビジネス型に必要なもの |
---|---|---|
顧客心理 | 自主的に比較・検討 | 担当者の信頼が決め手 |
営業手法 | 分業/スクリプト | 一貫対応/ヒアリング重視 |
成功指標 | CAC・CVR・LTV | 継続率・紹介・関係性 |
BizDevに求められるのは“営業構造の選定力”
BizDevには、事業タイプに応じて、最適な営業構造を設計し、展開フェーズに応じて見直す“柔軟な目線”が求められます。
- 今のフェーズでは、属人的アプローチが必要か?
- プロダクトは、誰が売っても再現できる構造か?
- リードから契約まで、どの部分を自動化すべきか?
まとめ
「この事業はスモールビジネス型か?スタートアップ型か?」という問いに明確な答えが出せること、そしてその事業タイプに合った営業構造を選べること。それが、事業の初期成長・信頼構築・スケール戦略を描くうえでの前提となります。
営業は単なる売る作業ではなく、事業構造そのもの。BizDevとして“営業のゲーム設計”を間違えないことが、成功への近道になります。
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