

ご覧いただいている『月刊タレンタル』では、「変革を起こす、ヨソモノたちへ」というコンセプトのもと、今いる場所や環境から一歩踏み出し、新たな挑戦に踏み出す人々を応援するコンテンツを発信しています。
今回お話を伺ったのは、株式会社プラスカラー 代表の佐久間 映里(さくま えり)さん。起業、出産・育児、そして海外移住と、次々にチャレンジを重ねてきたビジネスパーソンのひとりです。本記事では、佐久間さんが歩んできた挑戦の軌跡、そしてプラスカラーの主力事業である「NOZOKIMI(ノゾキミ)」のコンセプトについてご紹介します。
求人広告の法人営業を経験し、その後はIT系ベンチャーで営業・人事・広報と幅広い業務に携わってきた佐久間さんが、起業を決意したのは2013年のことでした。
25歳で結婚し、当時から子どもが欲しいと考えていました。ただ、当時はまだリモートワークやフリーランスといった自由度の高い働き方を選ぶ人は少なかったんです。出産後も仕事には全力で向き合いたいと思っていた私にとって、会社員のままで自分の理想とする生き方・働き方を実現するのは難しいと感じていました。
だったら、自分でつくってしまおう——そう思って、起業を決めたんです。
2013年にプラスカラーを設立。当初は、それまで担当していた広報の経験を活かし、企業の広報部立ち上げ支援を主な事業としてスタートしました。2015年には第一子を妊娠・出産しましたが、つわりがとても重く、約2カ月間入院することに。その間は営業活動を一時的に止めざるを得ず、事業の継続に大きな不安を感じた時期でもありました。
こうした危機を乗り越えながらも、事業は順調に成長を続けていました。しかしそのさなか、世の中はコロナ禍へと突入します。日本全体が閉塞感に包まれる中、佐久間さんはヨーロッパへの移住を決意。2021年の夏、子どもを連れて新たな環境へと踏み出しました。
コロナ禍では、多くの企業が出社禁止やリモートワークへの切り替えに苦労していたかと思います。でも実は、プラスカラーでは以前から「通勤に時間を取られるのは非効率だよね」といった声が社内で上がっていて、柔軟な働き方の必要性について日頃から議論していたんです。
子育て世代のメンバーが多いこともあり、働く場所や時間に縛られない体制を少しずつ整えていたことが、結果的にコロナ禍でも大きな混乱なくスムーズにリモートワークへ移行できた理由のひとつだったと思います。
また、子育て世代の多様な働き方を提案できる会社でありたい、という思いも強くあり、私自身が生活の拠点を海外に移すことで、よりそのスタンスを明確に示せるのではと考え、思い切ってヨーロッパ移住を決断しました。
現在は、全メンバーがリモートワークで働いており、私と同じように海外在住のスタッフも在籍しています。
起業、出産・育児、そして海外移住と、ライフステージごとに大きな変化を経験しながらも、しなやかにその壁を乗り越えてきた佐久間さん。
一見するとどれもハードルの高い挑戦に見えますが、その背景にはどのような考え方があったのでしょうか。
出産については、どうしても運の要素がありますが、それ以外の選択はすべて自分の意志とタイミングで決めてきました。自分で決断したことだからこそ、その結果にも責任を持つことができると思っています。
「できるか、できないか」ではなく、「やりたいか、やりたくないか」。もし挑戦してうまくいかなかったとしても、それはそれで学びや経験になります。でも、やらなかったことで後悔する気持ちは、自分の糧にはならないんですよね。
それから、私が大事にしているのは“100点を目指さない”という考え方です。
仕事も育児も——と、どちらも100点を目指してしまうと、どうしても無理が出てしまいますし、理想と違った自分を責めてしまうことにもつながってしまいます。
仕事も60点、育児も60点。でも、合わせて120点なら、それで十分。そんなふうに自分を認めてあげられると、精神的にも少しラクになると思うんです。
たとえば、フル出社でフルタイム勤務のほうが、もしかしたら仕事で100点の成果が出るかもしれない。でも私にとっては、今のバランスがいちばん心地よく、最適だと感じています。
佐久間さんが経営するプラスカラーでいま力を入れているのが、採用広報サービス「NOZOKIMI(ノゾキミ)」です。「働き方をアップデートしたい子育て世代と企業をつなぐ、採用広報のパートナー」というサービスコンセプトのもと、柔軟な働き方を実現している企業の取り組みを、丁寧な取材と発信を通じてサポートしていくために、この6月にリニューアルしました。
もともとは、「女性の活躍推進」や「女性の働き方」をテーマに立ち上げたサイトでした。ただ、いまでは子育てと仕事の両立は、もはや女性だけの課題ではなく、男性も含めた社会全体で向き合うべきフェーズに来ていると感じており、今回のリニューアルでコンセプトを再定義しました。
私自身は、起業という道を選びましたが、決してそれだけが正解だとは思っていません。社会的インパクトのある仕事に関わる手段としては、大企業やスタートアップに正社員として転職するという選択肢も、十分に意義あるものだと考えています。
一方で、産休・育休制度の充実や、産後のキャリアパス整備に積極的に取り組む企業が増えているにもかかわらず、それらの情報がきちんと発信されているケースは、まだまだ少ないのが現状です。
たとえば、当社のクライアントであるタクシー会社では、「子どもの送迎にタクシーを使ってもOK」という制度を導入した結果、転職希望者からの応募が増加したという事例がありました。いわゆるエッセンシャルワーカーの領域でも、こうした前向きな取り組みを進める企業は少しずつ増えていますが、その実態は十分に知られていません。
一般的な求人サイトでは見えてこない、各社のリアルな取り組みを、働き盛りであり子育ての真っ只中にいる30代・40代のビジネスパーソンに向けて、これからも丁寧に届けていきたいと思っています。
当社が強みとしてきた「広報」と「採用」を掛け合わせたアプローチで、企業や社会が抱える課題の解決に貢献していければと考えています。
佐久間 映里(さくま えり)
株式会社プラスカラー 代表取締役
2006年に大学卒業後、求人広告会社に入社し法人営業を担当。その後、2009年にIT系ベンチャー企業へ転職し、営業や人事の業務を経験したのち、広報部門の立ち上げを担う。2013年3月には、仕事と家事・育児の両立を自ら体現し、ロールモデルとなることを目指して、株式会社プラスカラーを設立、代表取締役就任。2021年からはヨーロッパに移住し、フルリモート体制のもと、同社の経営を続けている。
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