
M&A(合併・買収)において、「アーンアウト」という用語を耳にすることが増えています。アーンアウトは、取引後のリスク分散や買収価格の調整に利用される重要な手法です。本記事では、アーンアウトの基本概念やその仕組み、利点とリスクについて詳しく解説します。M&Aに携わる方々にとって、アーンアウトの理解は成功する取引の鍵となるでしょう。
アーンアウトとは何か
アーンアウトとは、M&A取引において、買収価格の一部を後払いにする契約形態を指します。この支払いは、買収対象企業が一定の業績目標を達成した場合に行われます。つまり、最初に支払われる金額と、後に支払われる可能性のある金額があり、後者は業績条件の達成に依存します。これにより、買い手はリスクを軽減し、売り手は企業のパフォーマンスを高めるインセンティブを持つことになります。
アーンアウトが活用される背景と理由
アーンアウトがM&Aにおいて活用される背景には、以下のような理由があります。
1.リスク分散の必要性
買収対象企業の将来の業績が不確実な場合、買い手は全額を即時に支払うリスクを避けたいと考えます。アーンアウトを利用することで、リスクを分散し、業績が実際に確認できるまで支払いを保留にすることができます。
2.信頼関係の構築
買い手と売り手の間で信頼関係を構築するために、売り手が自身の企業価値を証明する期間を設けることができます。これにより、売り手は買収後も企業の成長にコミットしやすくなります。
3.価格調整の柔軟性
M&A取引において、買収価格の合意が難しい場合があります。アーンアウトを利用することで、最終的な買収価格を業績に基づいて調整できるため、交渉がスムーズに進むことが期待できます。
4.業績目標の達成インセンティブ
売り手に対して、買収後の業績目標を達成するためのインセンティブを提供することで、企業のパフォーマンスを向上させる効果があります。これにより、買収後の企業価値が高まり、双方にとってメリットが生まれます。
アーンアウトの仕組み
アーンアウトの仕組みは、以下のように構成されます。
1.業績目標の設定
収益、利益、売上高など、具体的で測定可能な目標が設定されます。
2.評価期間の設定
通常、1年から3年の期間が設定され、この期間中に業績目標の達成状況が評価されます。
3.支払い条件の明確化
業績目標が達成された場合に支払われる金額や支払い方法(現金、株式など)が明確に定義されます。
4.モニタリングと報告
目標達成状況を定期的にモニタリングし、双方の合意に基づいて報告します。
アーンアウトの利点

アーンアウトには、以下のような利点があります。
1.リスクの分散
買い手は、買収対象企業の将来の業績に依存して支払いを行うため、リスクを分散できます。
2.インセンティブの提供
売り手に対して業績向上のインセンティブを提供することで、買収後のパフォーマンスを向上させる効果が期待できます。
3.買収価格の調整
初期支払い額を低く抑え、業績次第で最終的な買収価格を調整できるため、柔軟な取引が可能です。
アーンアウトのリスク

アーンアウトにはいくつかのリスクも存在します。
1.目標設定の難しさ
適切な業績目標を設定することは難しく、過大な目標や過小な目標は双方にとって不利益となります。
2.長期的視点での利益を棄損する可能性
売り手が短期的な目標達成を優先し、長期的な利益を犠牲にする可能性があります。
3.評価の曖昧さ
業績評価の基準が曖昧である場合、紛争の原因となることがあります。
アーンアウトの成功事例
あるソフトウェア企業のM&Aでは、売り手と買い手がアーンアウト条件を設定し、売り手が目標達成に向けて努力しました。その結果、企業の成長が促進され、買い手は期待以上の収益を得ることができました。この成功事例は、アーンアウトが適切に設定され、双方の信頼関係が築かれた場合に大きな成果を生むことを示しています。
まとめ
アーンアウトは、M&Aにおいて買収価格の一部を業績目標の達成に基づいて後払いする手法です。この仕組みは、リスク分散やインセンティブ提供、買収価格の調整など多くの利点を持つ一方、目標設定や利益相反、評価の曖昧さといったリスクも伴います。アーンアウトを成功させるためには、明確な目標設定と透明な評価基準、双方の信頼関係が重要です。M&Aに携わる方々は、アーンアウトの理解を深め、適切に活用することで、成功する取引を実現しましょう。
BizDevとしてのスキルやノウハウを活かして働きたいみなさんへ
ご覧いただいている「BizDevキャリア」を運営するtalental(タレンタル)株式会社では、BizDev領域の即戦力人材レンタルサービス「talental」を提供しています。現在、副業・フリーランス人材のみなさんのご登録(タレント登録)を受け付けています。無料タレント登録はこちらから。これまで培ったスキルやノウハウを活かして、さまざまな企業のプロジェクトに参画してみませんか?