

変化の激しいビジネス環境において、ただアイデアを出すだけでは価値は生まれません。成果を出す人材に共通するのは、「実行力」と「巻き込み力」の両立です。前者は計画を行動に移し続ける力、後者は他者を動かし、組織として成果を出すための協働力です。本記事では、実行力と巻き込み力の本質的な構造を分解し、思考の習慣・行動の技術・仕組み化の視点から、どうすればこの2つの力を戦略的に高められるのかを解説します。
多くの人が「実行力=やり抜く力」「巻き込み力=人を動かす力」と表層的に理解していますが、これらはより複雑で構造的なスキルです。
実行力とは、ビジョンを具体的な行動に分解し、仮説を検証しながら前進するための行動設計能力です。タスク管理や努力だけでは不十分で、「優先順位づけ」「リソース配分」「意思決定スピード」まで含まれます。
一方、巻き込み力は「感情的共感」と「合理的納得」の両面を使い分けて他者を動かす能力です。説得力のある言葉だけでなく、信頼構築・相手視点での語り・Win-Win設計などの複合スキルが求められます。
成果を出す人は、必ず「小さく始めて大きく動かす」アプローチを取っています。まず、彼らは“最小実行単位(Minimum Executable Step)”を特定し、とにかく一歩を踏み出します。完璧を目指すより「早く試す」ことを重視し、結果を見て軌道修正を繰り返します。
次に、「誰が鍵を握っているか」を見極め、そこから巻き込みに着手します。社内のインフルエンサー、現場のキーマン、あるいは経営層など、影響力の源泉を把握し、適切な順序で働きかけるのです。ここに共通するのは、“戦略的実行”と“構造的巻き込み”の組み合わせです。
実行や巻き込みができない原因は、能力ではなく“認知の歪み”にあります。よくあるのは、「完璧でなければ始められない」「説得力がなければ動かせない」といった思い込みです。また、「自分一人でやったほうが早い」「他人に頼むのは迷惑」といった心理的ハードルも、巻き込み力を制限します。
さらに組織環境にも要因があります。明確な意思決定プロセスがなく、巻き込み先が不明瞭な場合や、成果よりも過程が評価される文化では、実行と巻き込みが停滞しやすくなります。まずは、自分自身の“行動を止めている前提”を明確にし、それを手放すことから始める必要があります。
実行力と巻き込み力を自ら高められるフレームワークをご紹介します。
自分が「やりたいこと(WILL)」「できること(CAN)」「求められていること(MUST)」の重なりを明確にし、実行と巻き込みの動機付けを言語化します。
ゴールから逆算し、「今日・明日やるべきこと」にまで落とし込むことで、行動が曖昧にならず、実行力が高まります。
影響力×関係性でマトリクスを作り、どの順序で誰を動かすかの戦略を設計します。
巻き込みの基本は「個別対話」。1対Nではなく、まずは1対1で相手の価値観・動機を探り、個別最適な動かし方を設計します。
大きな計画よりも、小さな実行と検証を繰り返すことで、行動のハードルを下げ、失敗から学びやすくなります。
最後に、変化を起こす人材になるためには「再現性ある行動と仕組み」を持つことが重要です。視点としては、「自分がどう動くか」より「環境をどう設計するか」に意識を向けること。巻き込みやすい文化を自ら作り、実行を妨げる構造を排除します。習慣としては、毎週「誰を巻き込めたか」「どんな行動を取ったか」を記録・振り返ることが効果的です。
そして、仕組みとしては「情報共有の透明性」「意思決定の明確化」「小さな成功の可視化」を整えることが、継続的に実行と巻き込みを生む基盤となります。個の力を最大化するのではなく、“仕組みで成果を再現する”という発想が、真の変革をもたらします。
実行力と巻き込み力は、個人のスキルにとどまらず、行動設計・対人戦略・仕組み化の複合スキルです。成果を出す人材はこの2つを戦略的に使いこなし、変化を起こす環境ごと設計しています。自らの認知・行動・組織構造を見直しながら、継続的に実行と巻き込みを強化することが、これからのリーダーに求められる思考法です。
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