

スタートアップにおいて、CEOに次ぐNo.2の立場にあたる「COO」。BizDev領域でキャリアアップを目指す方であれば、一度は挑戦してみたいと考える役職ではないでしょうか。
今回は、フィンテック市場で急成長を遂げるペイトナー株式会社でCOOを務める野呂 祐介(のろ ゆうすけ)さんにインタビューを実施。COOとしての日々の業務や、役職を担ううえで大切にしている考え方などについて、お話を伺いました。
誰もが知る大手企業、NTTドコモに新卒で入社した野呂さん。入社後は約3年間、自治体向けのソリューション営業に従事し、その後はNTTドコモの営業基盤を活用して、ベンチャー・スタートアップの製品を販売する部門に異動。そこでプロダクトマネージャー的な役割も経験しました。その際の“失敗経験”が、ペイトナーへの参画を決める大きなきっかけとなったといいます。
NTTドコモでプロダクトマネジメントの仕事をしていたとき、スタートアップ企業と連携してプロダクト開発に取り組んでいました。ただ、結果的にはそのプロジェクトがうまくいかず、途中でクローズすることになったんです。
今振り返ると、ビジネスモデルや顧客に提供できる価値をしっかりと検証する前に、実現方法など具体的な議論に入ってしまったことが、失敗の原因だったのかなと思っています。この経験は自分の中でも強く残っていて、「今度は自分の手で、ビジネスをきちんとつくれるようになりたい」と考えるようになりました。
そんな想いを抱えていたころ、ドコモの和歌山支店で営業をしていた頃の先輩である阪井が、ペイトナーの前身となるyupの立ち上げを準備しているという話を聞いたんです。そして、自分も創業から関わることを決めました。
阪井とは、ドコモ時代に一緒に海外旅行に行くほど仲がよく、ずっと尊敬している先輩でした。自分とはまったく違う強みを持っていて、自分が戦略を練って綿密に進めるタイプなのに対し、阪井はとにかく泥臭く動いて、結果を出していくタイプ。自分にはないものを持っている人と一緒にやれば、きっと良いシナジーが生まれると感じました。
一度きりの人生、自分たちが本気で向き合うべき「問い」をビジネスとして解きたい——。そう思い、ペイトナーにジョインすることを決断しました。
こうしてペイトナーの創業に参画し、COOに就任した野呂さん。COOというポジションでの仕事内容について伺いました。
COOの仕事は、基本的には“なんでも屋”だと思っています。
当社では、CEOの阪井が資金調達など経営全般をリードし、私は営業・マーケティング・プロダクトなど、現場の執行全般を担っています。最近は各領域に責任者が立ってきたので私の担当範囲も絞られてきましたが、創業当初はユーザーインタビュー、オペレーション構築、プロダクトマネジメント、さらには債権回収まで、あらゆる業務を担当していました。
当社のような成長中のスタートアップでは、企業のフェーズが常に変化していきます。その中で、毎回もっともクリティカルな「問い」を立て、それに全力でコミットすることが、COOとしての最大の役割だと考えています。
たとえば、プロダクトがまだできていない段階ではプロダクトマネージャーとしての動きが求められ、プロダクトが完成すれば、マーケティングや営業活動のオペレーション構築へと役割が変わっていきます。いわば、“トリアージ(災害時に治療や処置の優先順位をつけること)”ですね。状況に応じて、自分自身の立ち位置を柔軟に変えることが求められます。
このような環境で成果を出していくために、私が特に大切にしているのが、「常に問いを持ち続けること」と「60点をあえて目指すこと」の2点です。
まず、「問いを持ち続けること」については、一度決めた方針であっても、本当に正しいのか?と常に疑う姿勢を持ち続けるようにしています。そうすることで、間違った方向に突き進んでしまうリスクを回避できるからです。自分自身への問い直しを怠ると、組織全体が後戻りできない状況に陥る可能性があります。
もうひとつの「60点を目指す」という考え方は、ビジネスが総合力で戦う場であることを前提としています。ひとつの項目を100点に仕上げることよりも、0点のまま放置された領域を60点に引き上げることのほうが、全体最適につながると考えているからです。
まずはすべての項目を自分の手で60点まで持っていく。そして、その後に専門の責任者を立てて、各領域で100点を目指してもらう。COOとしては、そんなバトンの渡し方を意識しています。
COOという、企業のNo.2ポジションを担う際に、野呂さんが意識していることや心がけはどのようなものがあるのでしょうか。
CEOというNo.1のポジションは、当社では阪井が担っています。ただ、良い意味で「上の立場として扱わない」ことを大切にしています。
経営陣として何よりも優先すべきなのは、「このゲームのルールを正しく理解し、進むべき方向を見誤らないこと」、そして「その方向に進むための企業文化を守り続けること」だと考えています。
当社ではその企業文化を体現する言葉として、「ラストマンシップ」を非常に重視しています。ラストマンシップとは、あらゆる事象に対して自分が責任者であるという意識を持ち、最終的な意思決定まで責任を引き受けるというプロフェッショナリズムのことです。
私たちが守るべきなのは役職や上下関係ではなく、この文化そのもの。役職というのは、文化を実現するための“道具”にすぎません。誰が言ったかではなく、「何を言っているのか」「それが企業として正しいかどうか」に向き合う姿勢を、COOに限らず全員が持つべきだと思っています。
ありがたいことに、阪井とはドコモ時代から「生意気な後輩」として、遠慮なく意見を言い合える関係だったので(笑)、そういったコミュニケーションは今も自然にできています。
2019年のペイトナー創業から約6年にわたり、COOのポジションを担ってきた野呂さん。最後に、これからCOOを目指す方へのメッセージを伺いました。
「COOは最終的に自分をクビにしろ」——この言葉を、私はとても大切にしています。これからCOOを目指す方にも、ぜひ伝えたい言葉です。
これは、元コロプラ副社長であり、現在は千葉道場ファンドのジェネラルパートナーを務める千葉巧太郎さんからいただいた言葉です。聞いた当初は、正直なところ完全には理解できていませんでした。でも今は、自分自身を目標達成のための“道具”と割り切ることだと解釈しています。
資本市場において評価される企業とは、どういう存在なのか。そして、それを実現するためには、どんな行動を取り、どのように進捗をモニタリングしていくべきなのか。COOには、そうした視点と実行力が求められます。
目先の数字に一喜一憂するのではなく、将来的な企業価値の最大化を見据え、そのための企業文化を築いていくこと。COOとして向き合うべきは、まさにこの点。自分自身もまだできていない部分もありますが、日々この言葉を反芻しながら取り組んでいます。
最後に、野呂さんがCOOを務めるペイトナーのサービスについても紹介します。
同社が提供する「ペイトナー」は、フリーランスや個人事業主向けのオンライン型ファクタリングサービスです。
入金前の請求書をもとに、最短10分で現金化できるのが大きな特徴。2019年の提供開始以来、累計申込件数は40万件を超え、急成長を遂げています。サービスの拡大に合わせて、組織もスピード感をもって成長している真っ最中です。
「ラストマンシップ」を大切に、個々の内発的動機に基づいて成長する企業を目指すペイトナー。そんな環境に共感し、挑戦してみたい方は、ぜひ応募を検討してみてください。
ペイトナー社 採用サイト:https://corp.paytner.co.jp/recruit
野呂 祐介(のろ ゆうすけ)
ペイトナー株式会社 共同創業者 最高執行責任者(COO)
南山大学を卒業後、2015年にNTTドコモへ新卒入社。法人営業やプロダクトマネージャーを経験したのち、2019年にペイトナーの創業に参画し、最高執行責任者(COO)に就任。全事業の現場執行を担いながら、同社の急成長を牽引している。Forbes「30 UNDER 30 ASIA 2023」に選出。
取材・執筆:武田 直人 / 撮影:山中 基嘉
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