企業のRPA活用のサポートやRPA人材のマッチングサービスを提供するPeaceful Morning株式会社を創業したのち、クラウドワークスにM&Aにより売却、その後2024年4月に自らの原体験をもとにM&Aのマッチングサービスを手掛けるM&Aドットコム株式会社を創業した藤澤さん。
今回のインタビューでは、藤澤さんの新規事業開発に対する想いと、事業選定において大事にしている考え方についてせまります。
RPA領域を選んだのは、自分の「CAN」が起点
パーソルキャリアで新規事業の立ち上げに携わったのち、2018年に起業した藤澤さんが、最初に考えていたのが子育てに関するサービスの事業化。子育てという領域を考えたのは、自身の原体験に基づくものでした。
そのサービスの立ち上げと並行して取り組んでいたのが、RPAサービスを手掛けるUiPath日本法人での採用支援の仕事。ここでRPAという当時広がりつつあった新しい技術分野と出会うことになります。
子育てに関するサービスの立ち上げから、新たに出会ったRPAの領域へとピボットすることになったのはどのような経緯だったのでしょうか。
藤澤さん:
当時のUiPathは、採用を強化し一気に人員を拡大していました。定型業務を自動化し、人間がより生産性の高い仕事に専念できるようにするというRPAの魅力に惹かれたことに加え、今後も成長が見込める市場であることを知り、RPAの領域に興味を持ちました。
ここには、先輩起業家であり、のちにPeaceful Morning社へのエンジェル投資家でもある小原 聖誉氏からのアドバイスがあったといいます。
藤澤さん:
小原さんからも、事業化するのであればまずは自分の能力・スキルが誰かの役に立てる「CAN」の領域からはじめるべき、とアドバイスをもらい、当初考えていた分野ではなく、自分の経験があるBtoBの領域でかつ市場成長性が期待できるRPAのジャンルを選択することにしました。
とはいえ、RPAに関する知識はまったくない状態だったので、RPAに関して発信している人に会いに行ったり、RPAに関する最新情報を自分でもブログで発信することでまた次の出会いにつなげたりしながら、RPAの領域に対する解像度を上げていきました。
このプロセスを通して、RPAの業界における課題や今後の成長が見込める分野として藤澤さんが注目したのが、「RPA分野の教育・研修」「RPAエンジニアの需要」そして「RPAに関する情報提供」の3つだといいます。この3つ目のニーズに対して、自身のブログをバージョンアップする形でリリースしたのが「RPA HACK」というWebメディアです。
藤澤さん:
設立当初は「RPA HACK」の広告記事などで最初のマネタイズを行いました。会社を設立したのが2018年9月で、最初にマネタイズができたのが翌年1月なので4カ月超かかりました。
その後、RPA人材のSES事業や教育・研修事業という他2つのニーズに対するサービス提供をはじめていきました。
そしてPeaceful Morning社は、設立から4年を経て着実に事業を成長させ、2022年9月にM&Aによりクラウドワークスグループにジョインすることになります。
1年間のロックアップを経てPeaceful Morning社の代表を退任、その後先述した小原氏が経営するStartPass社にCHROとして参画したのち、再び2024年4月にM&Aドットコム株式会社を創業されました。
売却を経て改めて認識した、自分の事業への想い
StartPass社を退任したのち、休養期間を経て再び自ら起業するという選択をした藤澤さん。この選択をした理由は、会社・事業という自分の子どものような存在を作り、育てていく感覚がもっとも自分にとって大切であることを再認識したからだといいます。
また、今回創業したM&Aドットコムは、M&Aにおける買い手企業側のソーシング業務を代行するというサービスを展開しています。2度目の起業でM&Aという領域にチャレンジすることに決めた理由はどのような経緯や想いがあるのでしょうか。
藤澤さん:
自分自身がM&Aというプロセスを経験したことももちろんありますが、自分にとって一番好きなのが、BtoBという自身の「CAN」を大事にしながら、未知の業界に飛び込んでさまざまな知識を吸収し人との出会いを通して、そこで発見した課題に対してサービス提供するというアプローチであると感じたからです。
M&Aの領域においてもHRビジネスにおけるエージェントのような存在があったり、プラットフォーム型のWebサービスが存在したりしていますが、ボトルネックになるのが買い手側のリソース不足だと感じました。HRビジネスにおいて人材紹介と転職サイトに加えてダイレクトリクルーティングやRPO(採用代行)というジャンルが生まれてきたように、M&Aの領域でも同様の流れが来るのではないかと感じました。
現在、藤澤さんと業務委託スタッフ数名によりクライアント企業のソーシングを支援する藤澤さん。自身の「CAN」を大事にしながら、新領域に参入することで新たな知見とノウハウ、そして人脈を獲得し、それをつなげながらまた新たなチャレンジに取り組まれています。
取材対象者プロフィール
藤澤 専之介
M&Aドットコム株式会社 代表取締役
大学卒業後、メーカーでの経理からキャリアをスタートし、人材ベンチャーを経てパーソルキャリアへ。その後RPA関連事業を手掛けるPeaceful Morning株式会社を2018年に創業し、2022年にクラウドワークスへ売却。退任後、StartPass社のCHROを経て、2024年4月にM&Aドットコム株式会社を設立し、現任。
Xアカウント:https://x.com/sennosukerpa