新規事業

NEC、ソニー、そしてNTTデータへ。大企業のBizDevに求められる「仮説検証」と「再現性」

今回「BizDevキャリア」でインタビューするのは、NTTデータのビジネス&サービスデザインユニットで活躍され、さまざまなクライアントの共創パートナーとして新規事業開発を伴走・実行支援している目黒友佳(めぐろ ゆか)さんです。

目黒さんは、これまでNEC、ソニー、そして現職のNTTデータといった日本を代表する大企業でBizDevとしてキャリアを積み重ねてこられました。そんな彼女が考える、BizDevに求められるスキルや考え方、そしてマインドについて、お話を伺いました。

大企業であっても、新規事業なくしては生き残れない

2009年に新卒でNECに入社し、コンシューマービジネス部門にて中期経営計画や事業戦略の策定、子会社の支援などを通じて新規事業の創造に関心を持ち、自らも積極的に新規事業提案を行うなど、BizDevとしてのキャリアをスタートさせた目黒さん。そんな彼女が、キャリアの早い段階で新規事業開発に興味を持つきっかけとなったのは、一体どのような経験だったのでしょうか。

目黒さん:

新卒で入社したNECは、大企業でありながらも経営幹部や子会社社長などトップ層との距離が近く、当時若手であった私の意見や提案でも、しっかりと受け入れてくれる懐の深さが魅力的でした。研修や育成も充実しており、「リーンスタートアップ」の概念や「デザイン思考(デザインシンキング)」のプロセスなど、新規事業創出に必要な体系的知識も身に付けることができました。

一方、当時のNECは外部環境が大きく変化する中で、事業ポートフォリオの見直しが求められており、既存事業だけでは持続的な成長は難しいと感じていました。新規事業を数多く生み出し、次の成長の柱を見つけなければ、たとえNECであっても生き残れない。そのような環境下で、新規事業の重要性を強く感じ、私自身もその分野に携わりたいと思うようになったのです。

その後、ヘルスケア領域の新規事業に携わり、プロジェクトオーナー側としてリサーチやコンセプト立案、プロトタイプ制作、PoC(概念実証)など、事業立ち上げに必要なすべてのプロセスを経験しました。

目黒さんは、このプロジェクトの終了後、アクセラレーターとしてNEC社内でさまざまな新規事業の伴走支援を担当。その後、ソニーへ転職することとなります。

目黒さん:

NECである程度「0→1」の経験を積むことができたため、次はその先の「1→10」のステージを経験したいと思い、ソニーに転職しました。ソニーではビジネスクリエイターという役割で、多くの新規事業のグロースフェーズに参画することができました。

新規事業における「再現性」をどう実現するか

NECとソニーでの経験を経て、フリーランスとしての活動やコンサルティング企業での勤務を行った後、2024年にNTTデータに入社。現在のNTTデータでの仕事内容について伺いました。

目黒さん:

フリーランスでの活動やコンサルティング企業での勤務でも、さまざまな新規事業の立ち上げ支援を行ってきましたが、自分の強みは大企業の新規事業創出プロセスを多く経験している点です。このノウハウや知見を活かし、大企業での新規事業創出やスタートアップとの連携強化にチャレンジしたいという想いから、NTTデータに入社しました。

NTTデータでは、クライアントの新規事業開発における共創パートナーとして伴走する「ビジネス&サービスデザインユニット」で活動しています。このチームが大切にしている価値観は、従来のNTTデータのソリューションの枠を超えて、より自由な視点でクライアントにとって価値のある事業創造を実現することです。

現在は、食品業界の新規事業開発プロジェクトや自治体と連携したオープンイノベーションプログラムを担当しています。

特に重視しているのは、クライアントにとって新規事業開発の「再現性」をどう担保するかという点です。プロジェクト終了後、当社の支援がなくなってもその事業が成長し続け、さらに別の新規事業が再び実行できるように、プロセスをブラックボックス化することなく「型」としてインストールしてもらうことを大切にしています。

図:ビジネス&サービスデザインユニットのソリューションの特徴(NTTデータ提供)

図:目黒さんの所属するInnovation Design&Accelerationチームのコアバリュー(NTTデータ提供)

正解にたどり着くまで、あきらめない

一貫して新規事業創出に取り組み続けている目黒さんが考える、BizDevとして必要なスキルや能力とはどのようなものなのでしょうか。ご自身が大切にしている考え方やマインドについても伺いました。

目黒さん:

BizDevの仕事に「向き不向き」というのはなく、「やるかやらないか」だと思うんです。いい意味で、誰でもできる仕事だと思っています。

BtoCでもBtoBでも、世の中の動きやトレンドをつかみ、仮説を構築する。そして、思考をパターン化して、常に複数の仮説を持っておけるようにすることが重要です。そのためには、幅広い領域での課題感や市場規模を常に把握しておくこと、それをアップデートし続けることも重要です。

この仮説構築が仕事の半分を占めます。もう半分は、その仮説の正しさや確からしさを検証するアクションです。

もちろん、その過程で想定外のことが起きたり、仮説が外れたりすることもあります。しかし、私は常に「最後には絶対実現できるはず」と考え、そのうえでピボットも含めた具体的な方策を練ります。

「できるはず」と信じて取り組むかどうかは、結果にも大きく影響すると思います。

やっぱり、新しい技術・新しいビジネスが生まれていくのが好き

最後に、BizDevとして邁進し続ける目黒さんの「根っこ」にある価値観についても伺ってみましょう。

目黒さん:

やっぱり、新しい技術やビジネスモデルが生まれ、それが世に出ていくプロセス自体がとても好きなんです。技術でいえばVRやXRも面白いですし、ジャンルでいえば、食品やお酒も個人的に好きなテーマですね。特にお酒を飲むのが好きなので(笑)。

大企業では、新しく生まれた技術をベースに、それをどう市場と接続し、ビジネス化していくかというアプローチを取ることが多いです。プロダクトアウトな側面もありますが、新しいテクノロジーには、それだけでわくわくするような魅力もあります。

新規事業開発の仕事が大好きなので、ちょうどフリーランスをしていた時期に子どもを2人出産したのですが、あまり休みを取らずにすぐに仕事に復帰しました。今も未就学児2人を育てながら働いているので大変なこともありますが、基本的に在宅勤務中心のワークスタイルですし、会社も柔軟に対応してくれるので、とても働きやすい環境で助かっています。

取材対象者プロフィール

目黒 友佳(めぐろ ゆか)
株式会社NTTデータ
コンサルティング事業本部 ビジネス&サービスデザインユニット テクニカル・グレード

2009年にNECに新卒入社。コンシューマービジネスのユニットにて中期計画や事業戦略の策定に従事し、その後ヘルスケア事業の立ち上げやアクセラレーターを担当。ソニーにてビジネスクリエイターとして従事したのち、フリーランス等での活動を経て2024年4月より現職。経済産業省「始動プロジェクト」1期生。

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