NTTデータで同期入社し、一方は金融系システムエンジニア、もう一方は公共営業という別々のキャリアをスタートしながらも、事業を作り出すことに楽しみを見出し、現在は「働く楽しさを作り出す力をブーストする」というミッションを掲げるROCKETS株式会社の共同代表として活躍する中沢剛さんと右澤マーシーさん。
今回はそんなお二人に、これまでのキャリアやBizDevという仕事との出会い、そして感じた楽しさ、ROCKETSという新会社を通して実現したい世界など、さまざまなお話を伺いました。
ピアノを通して学んだ、「メタ認知」の大切さ
プロのクラシックピアニストを目指し、3歳からピアニストとしての教育を受け、カナダ・バンクーバーで10代を過ごした右澤さん。ピアノを通して、「メタ認知」の大切さを学んできたと言います。
右澤さん:
自分の音をどのように聴衆に聞かせたいのか、自分の音が聴衆に対してどのような作用をもたらすのか、これを考えるように幼少時から常に言われて育ってきました。当時はあまりよく理解できていませんでしたが、今になればこれが「メタ認知」ということだったのかと実感します。
仕事においても、自分の今の仕事が会社や事業全体にとってどのような意味があるのかを常に客観視し、その中での自分の役割を意識しないと気持ち悪いと思ってしまうんですよね。たとえば自分の担当している商品やサービスをクライアントが購入することでどのような未来があるのか、そういうことをいつも考えてしまいます。
上記のような志向を持ちながらNTTデータにて公共営業としてのキャリアを歩みはじめた右澤さんが、BizDevという仕事に魅せられていったのは、どんなきっかけがあるのでしょうか。
右澤さん:
就職活動をするときは、正直あまり意識が高かったわけではありません。日本での生活経験がほとんどなく、父親も自営業だったので、ドラマなどでよく見る日本人のサラリーマンの生活というのが実感できなかったんですよね。であれば、もっとも日本人らしい仕事に就いてみようと考え、NTTデータでの会社員というキャリアを選択したような感じです(笑)。
幸いにも海外経験があり英語もできたので、3年ほど経ったタイミングでグローバルビジネスを所掌する副社長の戦略秘書というポジションを経験することができました。これが自分自身のキャリアにとってターニングポイントになりましたね。NTTデータのような大企業のトップポジションの方と海外出張に同行し、ボスが現地の経営者と交渉しながらM&Aという形で仲間に引き入れていく様を間近に体験させてもらいました。どうやって人と人がつながって仕事をしていくのかというプロセスと、大企業のトップの営業力や求心力を間近で見ることができたのは、非常に良い経験でした。
何よりも、こんな大企業のトップが一番仕事を楽しんでいるように見えたんですよね。自分もこんな風に心から楽しめる仕事がしたい、そう思うようになりました。
インターネットで、世の中はもっと面白くなる
右澤さんと同じく、東大卒業後のファーストキャリアとしてNTTデータを選んだ中沢さん。キャリアの初期にNTTデータを選んだ理由とそこからソフトバンクへ転職するまでの経緯を伺いました。
中沢さん:
大学時代はバンド活動に明け暮れており、そこでインターネットと出会いました。大学1年の頃にUNIXから初めてインターネットにアクセスした瞬間、今後さまざまな人々がインターネットを通して発信する世の中になるだろうという姿が見えた気がしました。その一方で、この素晴らしいインターネットの技術も、使われ方によっては非常につまらないものになってしまうんじゃないか。そんな懸念があり、自らインターネットの素晴らしさや面白さを世の中に伝えていく仕事がしたいと思い、NTTデータに入社しました。
NTTデータ時代に、ソフトバンクアカデミアというソフトバンクの後継者育成・発掘プログラムに外部一期生として参加したことをきっかけにソフトバンクグループに入社し、経営戦略室という組織で働きました。当時のソフトバンクは「日替わり長期戦略」と呼ばれるぐらい、毎日のように長期戦略が変わるタイミングで、その中でさまざまなプロジェクトを担当させてもらいました。
共同経営者としての出会い、そして独立
同期入社した2003年から18年を経た2021年。右澤さんと中沢さんは再び米国発のマーケットプレイス事業を日本で立ち上げるための事業でCEOに中沢さん、COOに右澤さんという経営体制で取り組むことになります。
右澤さん:
NTTデータでやりがいあるグローバルプロジェクトを担当しながらも、「自分でも新規事業を立ち上げてみたい」という気持ちが大きくなってきた頃、ちょうど中沢から誘いを受けたんです。当時のボスも応援して送り出してくれたことで、二つ返事でこの話に乗ることになり、3年ほど一緒に経営者として走ってきました。
そして2024年の退任後、二人はまた共同代表としてROCKETS株式会社を設立することとなります。
中沢さん:
ROCKETSを設立する前から、事業を作る楽しさをもっと多くの人に伝えていきたい、そんな仕事をしていきたいよね、という話を右澤ともよく話していました。これをビジネスにしていくにあたって、根っこの部分から信頼できるパートナーと一緒にやりたいと思っていたので、再び二人でタッグを組むことになったのは、僕にとってはとても自然なことです。
もちろん意見の相違でぶつかることもありますが、きちんとお互い歩み寄って結論をともに導き出すことができる関係性です。
当事者が楽しんでいるかどうかが差につながるのが、事業開発という仕事
1973年に有人宇宙飛行を行ったスカイラブ3号には、アニタとアラベラという2匹の蜘蛛が乗っていました。無重力状態で方向性の見えない中でも、この2匹の蜘蛛は数日たつと自ら方向感覚を見出し、巣を張り出すことに成功します。中沢さんはこのエピソードがとても好きだと言います。
中沢さん:
これって人間の仕事においても同じだなと思っていて。僕らも不確実性の高い時代に生きていますけど、その中で自分なりに意味を見出し、動くことが大切ですよね。与えられた環境が無重力空間であっても、自分なりにX軸Y軸Z軸を見出したアニタとアラベラのように、与えられた環境の中で仕事に意味を見出す力があれば、仕事をもっと楽しむことができる。
ROCKETSではクライアント企業の事業開発支援や人材育成、組織構築支援などのサービスを提供していますが、あくまでそれは表層的なものであり、本質的には働く楽しさそれ自身を伝えることや、仕事を楽しむために必要な「メタ認知」能力を身に付けるお手伝いができればと思っています。
同じ事業を描いても、当事者が楽しんでいるかどうかで如実に結果が変わるのが事業開発という仕事。だからこそ僕らは何よりも楽しむことや楽しむ力を身に付けることをサポートしていきたいと思っています。
会社のビジョンと個人のビジョンは相互補完関係にある
NTTデータという大企業の中で働く中で感じたトップの想いや仕事を楽しむ姿を見て感銘を受けた右澤さん。今度は自分がそうした楽しさを伝える立場になりたいと語ります。
右澤さん:
スタートアップでも大企業でも、会社という組織が個人の集合体である以上、個人の想いが集まってチームとして機能していくことは変わらないと思うんですよね。NTTデータのような大企業でも、個人がそういうマインドで仕事に取り組んだり、情報を取りに行ったりすれば、楽しんで働くことができるんだと感じました。
会社のビジョンと個人のビジョンは別々な存在ではなく、相互補完関係にある存在だと思っています。それを結びつけるために大事なのは、自分の働く意味を見出す「メタ認知」の力。ROCKETSの事業を通して、その力を多くの企業やビジネスパーソンにインストールしていければいいなと思います。
取材対象者プロフィール
中沢 剛(なかざわ ごう)
ROCKETS株式会社 共同代表
東京大学文学部卒業後、2003年NTTデータに入社。金融システムエンジニアとしてキャリアを開始後、事業開発に転じ、黎明期のファッションECの事業開発などに携わると共に、流通小売の未来像に関するフォーサイトを発信。2012年 ソフトバンクグループ経営戦略室に参画し 戦略企画に従事。SaaS企業設立や数社での事業立上支援を実施。 日本大学での研究センター立上支援などを経て、2021年よりマーケットプレイス型のプラットフォーム事業を立ち上げ24年までCEOを務める。事業を前に進められる人を増やしたいという強い思いから2024年、ROCKETSを設立。著書に、「アイデアのスイッチ!」 ダイヤモンド社・共著に「NTTデータ流ソーシャルテクノロジー」リックテレコム。
右澤(うざわ) マーシー
ROCKETS株式会社 共同代表
2003年 東京大学法学部卒業後、NTTデータに入社。 提案営業、PMO、サービス立上をへて、同社グローバル戦略の真っ只中に参画。 黎明期からのグローバル推進チームの一人として海外事業会社のPMIや 海外でのグループブランドの確立のためのマーケティングなどを担当し、海外事業急成長の軌跡の一翼を担った。2021年に 米国発プラットフォームを日本市場で立ち上げるためベンチャー経営に参画、COOとしてボーダーを越えたプロジェクト立上・推進、スピーディーな事業遂行、推進力を高める組織設計など、オールラウンドに事業を推進。20歳までプロのクラッシックピアニストを目指し10代の10年をカナダ、バンクーバーで育つ。日英バイリンガル。 ビジネス上必要なマインドや、ぶつかる壁への向き合い方を伝えるべく 2024年ROCKETSを設立。
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