
M&Aを検討する企業にとって、最初に買い手候補へ案件を伝える手段となるのが「ノンネームシート」です。通常は仲介会社を通じて提供されるこの資料は、売り手の意図や魅力を匿名で伝えるため、情報設計の巧拙がその後の反応を大きく左右します。この記事では、売り手の視点から、ノンネームシートに記載すべき項目や表現のポイント、買い手の関心を引く工夫について解説します。
ノンネームシートとは?売り手企業にとっての意味
ノンネームシートとは、M&Aの初期段階において、案件の概要を匿名で紹介するための資料です。売り手企業の名前や詳細情報は伏せたまま、業種、事業内容、財務状況、譲渡理由などを簡潔に記載します。このシートは、売り手が買い手候補の関心を引き、次のステップであるNDA(秘密保持契約)締結後の情報開示につなげるための最初の接点です。売却を成功に導くためには、読み手が「この案件をもっと知りたい」と思えるような内容に仕上げることが求められます。
仲介型M&Aでのノンネームシートの位置づけ
M&Aの多くは、直接交渉ではなく仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)を通じて進められます。ノンネームシートはこのような第三者の仲介者が、買い手候補に対して広く案件を紹介する際に使用される資料です。売り手が自ら作成するケースもありますが、通常は仲介者と連携して情報の設計や表現を調整します。したがって、売り手企業としては、仲介者に伝える情報の質と伝え方がそのまま案件の魅力度に直結します。仲介者が買い手に案件を提案しやすいよう、戦略的な構成が求められます。
買い手の関心を引く基本構成と情報設計
ノンネームシートで記載すべき基本項目は以下の通りです。
- 事業領域・業種(例:BtoB向けクラウド型サービス)
- 提供サービスや主な顧客層
- 売上・営業利益などの財務データ(直近1〜3期分)
- 譲渡理由(例:後継者不在、事業の選択と集中)
- 事業の強み、将来性、ユニークな資産(人材、知財、顧客基盤など)
これらの情報を、買い手候補が読みやすく、理解しやすいように簡潔に整理することが重要です。情報が不足していても反応は得られませんし、過度な詳細は匿名性のリスクを高めます。仲介者とも連携しながら、過不足のないバランスが求められます。
売り手視点で伝えるべき魅力の表現方法
売り手企業としては、ノンネームシートで自社の魅力を客観的かつ簡潔に伝える必要があります。買い手の視点を持ち、以下のような情報を意識して記載しましょう。
- 競合との差別化ポイント
- 顧客からの高評価(例:リピート率、継続契約率)
- 効率的な運営体制(例:少人数で高収益)
- 移管可能なマネジメント体制
また、曖昧な言葉ではなく、できる限り定量的な指標で裏付けることで、読み手に安心感を与えることができます。売り手が一方的に伝えたい内容ではなく、「買い手が知りたいポイント」に寄せることが、成功への鍵です。
ノンネームシート作成時に注意すべきポイント
ノンネームシート作成時に気をつけるべき点は複数ありますが、最も重要なのは「匿名性の確保」と「信頼性のある情報提供」のバランスです。特定されやすい表現(地名、固有の取引先、ユニークすぎる技術など)は避ける一方で、抽象的になりすぎて何をしている会社かわからない内容も避けるべきです。また、将来の成長可能性を記載する際は、「見込み」「想定」などの表現でトーンを調整し、過度な期待を与えないよう配慮する必要があります。仲介者とのすり合わせを丁寧に行うことで、適切な表現バランスが保たれます。
まとめ
ノンネームシートは、M&Aにおける売り手企業が買い手候補と最初に接点を持つ資料であり、通常は仲介会社を通じて活用されます。匿名性と情報の魅力度を両立させることで、関心を高め、案件の成約可能性を広げることができます。売り手企業としては、戦略的な情報設計と仲介者との連携により、よりよい第一印象を作り上げることが重要です。
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