

日本が直面する「デジタル赤字」は、海外ITサービスへの依存により、国全体の支出が収入を大きく上回っている状態を指します。従来は「国産ツールの活用」が解決策として語られてきましたが、果たしてそれは本質的な打ち手なのでしょうか。本記事では、デジタル赤字の本質的な構造問題と、BizDevや経営の視点から本当に必要な対策、そしてAI時代だからこそ可能になるグローバル戦略について深掘りします。
「デジタル赤字」とは、クラウド、OS、広告、動画配信、アプリなど、海外のITサービスに対して日本が支払う金額が、海外から受け取る金額を大きく上回っている状態です。2023年、日本のデジタル関連のサービス収支は5兆円を超える赤字を記録し、今後さらに拡大する見込みです。
これは単なる財政問題ではなく、ITサービスを生産・輸出できていないという産業構造の問題であり、国際競争力の低下を示す深刻な兆候です。
この赤字は突発的なものではなく、以下の構造要因によって生まれました。
インフラ、業務アプリ、マーケティング、コンシューマー向けサービスまで、あらゆる領域で米系プラットフォームが標準化しており、国内の代替が乏しい状況です。
日本企業が提供するITサービスの多くは国内限定であり、海外市場でのスケーラビリティが確保されていません。これは「稼げない構造」を意味します。
多くの企業がベンダー依存から脱却できず、自社でテクノロジーを設計・開発・運用する力が不足しています。この構造的な弱さが、継続的なコスト流出を生んでいます。
「国産SaaSを使えば赤字は減る」という議論がありますが、それは対処療法にすぎません。
競争力のないツールを「国産だから」と使っても、業務効率や顧客満足度が下がれば本末転倒です。質が伴わなければ市場に定着しません。
デジタル赤字の核心は「外貨を稼げていない」ことです。国産ツールを国内で使っても、輸出にはつながらず、経常収支の改善効果は限定的です。
重要なのは、「どのツールを使うか」ではなく、「自社で何を設計・実装できるか」です。ツール選定すら外部依存している状態では、本質的な競争力は高まりません。
日本企業がデジタル赤字構造から脱却するには、次のような戦略が必要です。
業務効率化や差別化につながるツール・システムは、できる限り自社で開発する文化を築くべきです。これが長期的に見た競争優位を生みます。
海外展開を前提としたSaaS、AIソリューション、データ基盤などを企画・開発し、外貨を稼ぐプレイヤーになることが本質的な赤字解消に直結します。
CTO、プロダクトマネージャー、テックリードなど、ITと経営をつなぐ人材を社内に育成・配置し、外部ベンダー任せの体質を脱却する必要があります。
デジタル赤字の解消には、政府のスタートアップ支援や人材育成も重要ですが、それだけでは不十分です。個々の企業が「消費する側から、提供する側へ」と戦略を転換することが不可欠です。
BizDevにおいては、どのような技術やデータ資源を武器に、どこで収益化し、どのようにスケーラブルに成長できるかという観点で事業を設計することが求められます。「デジタルをどう使うか」から、「自らの価値としてどう構築するか」への発想の転換が必要です。
かつてグローバル展開を阻んでいた「言語の壁」は、AIによって急速に解消されつつあります。これは、日本企業にとってかつてないほどの大きなチャンスです。
生成AIにより、リアルタイムかつ高精度な多言語翻訳が可能となり、社内・社外のコミュニケーション障壁は大幅に低下しています。
多言語サポート、現地対応、ローカル仕様への適応が、以前より遥かにスピーディに、低コストで実現可能となっています。
日本特有の強みを持ったサービスやUXが、AIの支援によってそのまま海外市場に展開可能になりつつあります。まさに「今」が飛び出すチャンスです。
デジタル赤字は、海外ITサービスへの依存と日本のデジタル競争力の低さが生んだ構造的な問題です。単なる国産ツール導入では解決せず、技術自立と外貨を稼ぐプロダクト戦略が求められます。AIによって言語の壁が低くなった今こそ、日本企業は世界を視野に入れた挑戦に踏み出すべき時です。
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