マーケティング

顧客は本音を語らない。デプスインタビューで読み解くインサイト思考

「お客様の声」を集めてプロダクト開発やマーケティングに活かしているつもりなのに、なぜか成果に結びつかない——。そんな経験はありませんか?それは、顧客が必ずしも“本音”を語っていないからです。そこで重要になるのが「デプスインタビュー」です。表面的な意見ではなく、行動の裏にある真の動機や欲求を深掘りし、インサイトを読み解くこの手法は、事業開発やプロダクト改善における強力な武器となります。本記事では、デプスインタビューの基本から実践方法まで具体的に解説します。

顧客の「言葉」は本音ではない?インサイトの重要性

「欲しい機能はありますか?」「何が不満ですか?」といった質問に対して、顧客はしばしば建前や表面的な回答を返します。しかし、本当に価値ある情報は、その奥にある“気づいていないニーズ”や“無意識の行動パターン”に隠れています。これを「インサイト」と呼びます。表面的なアンケートや短時間のヒアリングでは、このインサイトにたどり着くことは困難です。顧客自身も言語化できていない感情や行動の理由を、丁寧に聞き出すアプローチが求められます。

デプスインタビューとは何か?基本のフレームワーク

デプスインタビューとは、1対1でじっくりと行う深層インタビューのことです。表面的な意見だけでなく、行動の裏にある価値観や動機、無意識の課題を引き出すことを目的としています。

代表的なフレームワークには以下のようなものがあります。

  • 5回の「なぜ?」(5 Whys):表面的な回答に対して「なぜ?」を繰り返し、本質的な動機に迫る。
  • ジョブ理論(Jobs to be Done):顧客が“なぜそのプロダクトを選んだのか”、背後にある“雇用された理由”を探る。
  • 感情曲線(Emotional Journey):顧客の体験プロセスを可視化し、感情の起伏から課題や満足ポイントを発見する。

デプスインタビューは、ただ質問するのではなく、こうしたフレームワークを活用して掘り下げていくことが重要です。

本音を引き出す質問設計とテクニック

デプスインタビューでは、質問の仕方一つで得られる情報の深さが大きく変わります。

有効な質問設計のポイント

  • 具体的なエピソードを聞く:「最近、○○を利用したのはいつですか?その時どんな気分でしたか?」
  • 感情に焦点を当てる:「その時、一番困ったことは何でしたか?」
  • 行動の理由を深掘る:「なぜ、その選択をしたのですか?」

テクニック例

  • ポーズ(沈黙)の活用:あえて沈黙を作ることで、相手はより深く考えて答えようとします。
  • 反復と要約:「つまり、○○ということですか?」と確認し、話の核心を明確にします。
  • 逆説的質問:「もしこのサービスがなかったら、どうしていましたか?」と想像させることで、隠れたニーズが見えてきます。

デプスインタビュー事例に学ぶ成功パターン

事例:サブスクリプション型フィットネスアプリの改善

あるフィットネスアプリでは、アンケートで「続けやすさが大事」と多くのユーザーが回答していました。しかしデプスインタビューを実施すると、「実は毎日通知が来るとプレッシャーに感じる」「完璧にやれない自分に自己嫌悪する」といった本音が判明。そこで、アプリは「週1回の達成感を積み上げる設計」に変更し、結果的に解約率が大きく下がりました。

このように、表面的なニーズと本音は必ずしも一致しません。インサイトに基づいた施策は、顧客体験を大きく改善する力を持っています。

インサイトを事業開発に活かすためのポイント

インサイトを得ただけではビジネスは動きません。それをどう事業戦略やプロダクト設計に落とし込むかが重要です。

  • インサイトの分類と優先順位付け:すべてのインサイトに対応するのは不可能です。収益性や市場性を踏まえて、優先度の高い課題に集中しましょう。
  • プロトタイピングと検証:得られたインサイトから仮説を立て、スピーディにプロトタイプを作成し、実際の行動変容を観察します。
  • インサイトを共有資産にする:チーム内で得られたインサイトをナレッジとして蓄積・共有することで、属人化を防ぎ、組織の意思決定スピードを高めます。

まとめ

顧客は必ずしも本音を語ってくれるわけではありません。しかし、その行動の奥にある感情や動機に目を向けることで、事業開発やプロダクト改善に直結する貴重なヒントが得られます。デプスインタビューは、その「隠れた声」を可視化する強力な手法です。インサイトを読み解き、適切に活用することで、より本質的な価値提供につなげていきましょう。

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