
スキルを磨き続けているのに、なぜか変化に乗り遅れている──そんな違和感を抱えるビジネスパーソンは少なくありません。その原因のひとつが、「学び足すこと」に偏りすぎている状態です。
今、注目されているのが「アンラーニング(Unlearning)」という考え方。これは、ただ新しい知識を得るのではなく、過去の成功体験や思考パターンを“手放す”ことで成長を促すアプローチです。この記事では、リスキリングやリカレント教育との違いを軸に、アンラーニングの重要性と実践方法を解説します。
スキルを学び直す前に、“何を捨てるか”が問われている
近年、ビジネスの現場では「リスキリング」や「リカレント教育」が急速に注目されています。生成AIやデジタルツールの進化によって、学び直しはもはや必須となり、社会人向けの研修や講座も増え続けています。
しかし、いくら学び直しても活かされないケースがある。その理由の一つが、「古い価値観ややり方を残したまま、新しい知識を上乗せしている」ことです。
たとえば、「営業は足で稼ぐもの」という価値観を持ったままSaaS営業の研修を受けても、学んだ内容を現場で実践するには大きな摩擦が生まれます。
つまり、今問われているのは、新しい知識を入れる“前に”何を手放すかという視点です。
リスキリング・リカレントとの違いとしてのアンラーニング
リスキリングやリカレント教育は、いずれも「新しいスキルや知識を獲得するための学び直し」です。一方、アンラーニングはその前段階に位置するプロセスであり、目的も異なります。
概念 | 主な目的 | 内容 | タイミング |
---|---|---|---|
リカレント教育 | キャリアを継続的に再設計する | 学びと仕事を繰り返す | 長期的視点 |
リスキリング | 新しい職務や環境に適応する | 新スキルの習得 | 現場対応型 |
アンラーニング | 古い思考や価値観を手放す | 思考のリセット | 学びの前提づくり |
アンラーニングは、学びの「空き容量」をつくる作業とも言えます。過去のやり方や固定観念が残ったままでは、新しい知識は定着しづらいのです。まず、「この考え方はもう役に立たないかもしれない」と認めるところから、本当の学び直しが効果を発揮します。
アンラーニングが必要になる3つのビジネス状況
アンラーニングが求められる場面には共通点があります。特に、以下のような状況では「まず手放す」ことが成長の前提となります。
1. 環境や市場の構造が根本的に変わったとき
たとえば、toC営業からtoB SaaSに転職した場合、「短期で成果を出すことが正義」という旧来のマインドはむしろ障害になります。
2. 自分より若い世代の考え方にギャップを感じたとき
「最近の若手は…」と感じたときこそ、価値観のアップデートが必要なサイン。世代間ギャップは、思考のアンラーニングでしか埋まりません。
3. 同じやり方で成果が出なくなったとき
過去の成功パターンを繰り返すうちに、成果が鈍化してきた──それは「時代が変わっているのに、自分のやり方が止まっている」ことを示すサインです。
実践の鍵は「前提を疑う」習慣化
アンラーニングの第一歩は、「当たり前」を疑うことです。
- それ、本当に“今”も正しい?
- それって“誰の視点”での成功だった?
- そのやり方、10年前から変わっていないのでは?
こうした問いかけを、日々の意思決定や会議の中に取り入れるだけでも、アンラーニングの習慣は始められます。さらに、他社の事例を見たり、異業種の人と話したりすることで、「自分の思考がいかに偏っていたか」に気づく機会も増えます。つまり、アンラーニングとはスキルではなく“思考の習慣設計”であり、それを仕組みとして日常に組み込むことが重要です。
キャリアを動かすのは、知識より“解釈の更新力”
これからのキャリアに本当に必要なのは、「何を知っているか」ではなく、「どれだけ自分の考えを更新し続けられるか」です。同じスキルを持っていても、古い枠組みに縛られている人は変化に対応できません。一方で、新しい環境に柔軟に向き合える人は、変化を武器にすることができます。
アンラーニングとは、過去の自分を否定することではありません。「これまでのやり方をいったん横に置き、ゼロベースで再考すること」によって、次のステージを拓く力なのです。変化に強い人は、過去を忘れたのではなく、「過去にしがみつかない力」を持っているのです。
まとめ
アンラーニングとは、過去の成功体験や思考のクセをいったん手放し、新しい知識やスキルを柔軟に受け入れるための準備です。リスキリングやリカレント教育とは異なり、アンラーニングは“学ぶ前のマインドセット”を整える役割を担います。変化が激しい今、キャリアを切り拓く鍵は「学ぶこと」ではなく、「いったん忘れること」なのかもしれません。
BizDevとしてのスキルやノウハウを活かして働きたいみなさんへ
ご覧いただいている「BizDevキャリア」を運営するtalental(タレンタル)株式会社では、BizDev領域の即戦力人材レンタルサービス「talental」を提供しています。現在、副業・フリーランス人材のみなさんのご登録(タレント登録)を受け付けています。無料タレント登録はこちらから。これまで培ったスキルやノウハウを活かして、さまざまな企業のプロジェクトに参画してみませんか?